トップへ

今宮純によるヨーロッパGPドライバー採点&短評

2016年06月24日 19:31  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

ヨーロッパGPでは満場一致の“MVP”となったセルジオ・ペレス
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選ぶ。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。

ーーーーーーーーーーーー

☆ リオ・ハリアント
ベストグリッド16位まで前進。ストレート速度が高いマノーによって予選セクター3では6位タイム(!)、アタックラップをまとめあげた。レースでは1周目にハースと接触してノーズ交換、そこからソフトで「最長48周」。摩耗しきったタイヤを最後までコントロールした、これも経験。

☆ パスカル・ウェーレイン
多数派とは“逆戦略”のソフトタイヤでスタートして、一時は8位を走行。中間チーム勢ひしめく集団戦のなか、DTM王者はセクター2で防御ラインを、ストレートではスリップストリームを駆使。ブレーキを失って初リタイアとなるまで、ザウバーをとらえようとしていた。

☆ フェリペ・ナッセ
12位フィニッシュは今季最高位。初日からパンクやパワーユニット交換などあり、十分に初コースを走りこめなかった。それでも決勝自己ベストタイム11位、マクラーレンのジェンソン・バトンを追った。ザウバーの現有戦力としては、ベター・レース。

☆☆ ケビン・マグヌッセン
予選最下位となったルノー勢、彼は今季2度目のピットスタートに賭けた。バーレーンGPでは11位、ここでは14位を。ルノーのパワー・ハンデがあり、終盤は燃費もタイヤも厳しかったが上昇、レース強さを発揮した。

☆☆ カルロス・サインツJr.
フェルナンド・アロンソ、バトンたちとのマッチレース。それから見えたのはフェラーリ旧パワーユニットとホンダ、トロロッソとマクラーレン現在の戦力構図。高速ストリートのバクーを初日から元気に攻めていたのだが、サスペンション・トラブルで、スペインGPから確実なレース展開で続けていた入賞がストップ……。

☆☆ ダニール・クビアト
ウイリアムズ2台に割り込む予選7位タイム、4戦目にしてマシン特性を把握したことはブレーキングに感じとれた。だが、スタート直後からハンドリングが不安定に陥り、無抵抗のまま抜かれていった。この異常をピット側は気づかなかったのか、自信を取り戻す好機を失ったクビアトは無念。ウラル地方から、おそろいのTシャツ姿の応援団が、いっぱい来ていたのに。

☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
初日は8周して、すぐ1分49秒台に入れ、フリー走行1回目ではメルセデス・パワーユニット勢に次ぐ4位につけた。たちまち未知のコースをマスターしてみせる、アロンソのドライバー力。しかし初日の1分47秒989から、予選の1分45秒270まで2.719秒しか伸びていない。ちなみにポールポジションのニコ・ロズベルグは4.054秒だ。走れば走るほど伸びるライバルに比べ、グランプリ週末の“下落”傾向が著しい。ここまで8戦中、リタイア3戦と欠場1戦、なお闘志を失わず気丈な態度に頭が下がる。

☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
フェラーリのターボ改良効果によってMGU-H回生機能の向上が進み、ストレートラインでの戦闘力はアップ。けれどもパワーユニットの進化度にシャシーのほうは、もう一歩。カナダGPから新採用のリヤサスペンションの熟成に時間を要している。それが金曜の不振に如実に表れ、ようやく予選でベッテル4位へ。1ストップを自分から要望、粘って得た2位をチームの戦略担当、タイヤ担当、その他スタッフで綿密な検証をすべきだろう。

☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
初バクーをどう攻め込むか、最も注目していた。というのも昨年のモナコGPのフリー走行1回目で2位、メキシコGPのフリー走行1回目で1位と、未知のゾーンに瞬く間に切り込む才能を目の当たりにしたから。だが、ここではオイル漏れで実質3周のみ、その3周目に1分50秒485。これはルイス・ハミルトンの計測3周目、1分50秒950にまさり、驚かされた。予選はバルテリ・ボッタスとからみ9位。「(予選3位の)リカルドに並ぶ感触があった」と、くやしがった。ロ―ダウンフォース設定のレッドブルはスーパーソフトでのリヤタイヤ劣化が激しく、2ストップを強いられてミディアムタイヤに交換。それで50周目に総合3位相当タイム(!)を出し「飛ぶようなペースだった」と言う。苦しい戦況にキラリと光った才能。

☆☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
ロシアGP完全勝利のときもポールポジションで、ハミルトンは10位。両者まったく同じポジションから2度目の完全勝利。余談になるが、<ケンカ(勝負)の鉄則は相手を見きわめること>──いつ、どこで、自分にかかってくるか、それを頭のどこかに置き、スタートから独走。警戒すべきはセーフティカー出動事態だが、それはなく、中盤に起きたパワーユニット変調にも冷静に対応。現在11戦8勝は大記録だ。

☆☆☆☆☆ セルジオ・ペレス
ラッキー7スタートから、3位表彰台。そう、グリッド7位から昨年ロシアGPも、今年モナコGPも、そしてまた、ここでも。「二度あることは三度」メキシコに、そんな諺があるのか知らないが、激走をやってみせた。結果論ではなく、土曜フリー走行でのクラッシュが、かえって気を引き締め、より一層、集中心を高めたのではないか。チーム・メカニック全員にとって、この3位は勝利に値する。

 

 

番外編・チーム賞は、F1速報フェイスブックで
https://www.facebook.com/f1sokuho/posts/893616567431388