今週末、オランダのアッセンでMotoGP第8戦オランダGPが開催される。
オランダGPはMotoGPシリーズ中、最も歴史のあるグランプリ。1954年以降、現在のアッセンを舞台に開催されており、昨年までは土曜日に決勝レースが開催されるスケジュールだったが、今年から、他のグランプリと同様に日曜日決勝に変更となった。
もともと公道コースをベースに発展してきたアッセンは、ライダーにとってチャレンジングなテクニカルコースとして知られてきたが安全性の向上のため、2006年にコースが大きく改修され、1周4.555㎞となった。その後、何度か小さなコース改修が行なわれているが、高速コーナーが連続するライダーにとって攻略が難しいテクニカルサーキットというキャラクターに変わりはない。
そして、アッセンのレースを難しくしているのが、ダッチウェザーと呼ばれる不安定な天候だ。3日間のセッションの中で例年、必ず雨が降り、しかも、短い時間の中で天候が急変する場合が多く、ライダーたちの戦いをより難しくする要素となっている。
昨年のMotoGPクラスではマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)とバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ)が最終ラップまで接戦のトップ争いを展開、最終シケインでマルケスがロッシのインを付き、両者が接触。ロッシはグラベルに飛び出し、コースをショートカットしてトップでチェッカーを受け、コースをキープして最終コーナーを立ち上がったマルケスは2位となった。3位にはホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ)が続いた。
Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)が優勝、Moto3クラスではミゲール・オリベイラ(KTM)が優勝した。
今レースで通算250戦目の開催を迎えるMotoGPクラスでは、前戦カタルニアGPでマルク・マルケス(ホンダ)がランキングトップに浮上した。マルケスはここまでの7戦で2勝、2位2回、3位2回に入賞している。アッセンでは125時代の2010年、Moto2時代の2011年と2012年、MotoGPクラス1年目の2013年と優勝を経験した得意のコース。
「アッセンはすごく楽しく、僕のライディングスタイルに合っているシーズン最初のコースだ。バイクはステップ・バイ・ステップで改良しているから、アッセンでもいいセットアップを見つけるために、最初のセッションから懸命に働き、表彰台争いにトライしたい。アッセンは天候が予想不可能だから注意が必要だ。金曜日から速く走れるようにトライしたい」とマルケス。
カタルニアGPでノーポイントに終わったホルヘ・ロレンソはマルケスに10ポイント差のランキング2位に後退してしまった。ただし、このノーポイントはロレンソのミスではなく、決勝中にアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)に追突されて転倒リタイアに終わったもの。
ロレンソはここまでの7戦で最多の3勝を記録、2位に2回入賞しているが、アルゼンチンとカタルニアの2回のノーポイントが響いている。アッセンのMotoGPクラスでは2010年の1勝のみ、2014年には初日のフリー走行の転倒で鎖骨を骨折しながら、緊急手術を受けて決勝に臨んだ経験を持つ。
「カタルニアは残念だった。クラッシュで全てが台なしとなってしまった。今はあのアクシデントを忘れ、アッセンで再び戦いたい。アッセンは大好きなコースだけど、よい思い出も悪い思い出もある。コースレイアウトは、僕たちのマシンに合っているから、いい結果を得られるチャンスがあることがうれしい。レースが楽しみだね」とロレンソ。
前戦カタルニアGPで今シーズン2勝目を記録したバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)はアメリカGPの転倒、イタリアGPのマシントラブルによる2回のノーポイントレースが響き、ロレンソとは12ポイント差のランキング3位。アッセンのMotoGPクラスでは2002年、2004年、2005年、2007年、2009年、2013年、2015年と通算7勝を記録している。
「アッセンは好きなコース。今年は接戦が続き、どんな展開になるか分からないので、それ以上のことは何も言えない。集中力を維持し、ベストな仕事をしなければならない。カタルニアではいいレースができ、レース後のテストもよかった。チームと一緒にレースに向けて準備をしたい」とロッシ。
ランキング4位にダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)。ここまでの7戦で勝利はないものの、前戦カタルニアGPで今季2度目となる表彰台を獲得している。
「前戦でいいラップで走ることができ、バトルを楽しめ、表彰台に戻れたことはよかった。アッセンではいい仕事をするために集中する必要がある。ここ数戦と比較して、気温は低く、高速コーナーが多いから、どのようなフィーリングが得られるか確認したい」とペドロサ。
マーベリック・ビニャーレス(スズキ)はランキング5位。125cc、Moto3時代に優勝経験を持つアッセンで、MotoGPクラス初表彰台となったフランスGP以来となる表彰台の獲得にに期待がかかる。
「カタルニアのレース後のテストは、ニュースペックのシャーシのポテンシャルを検証するのに非常に有効的だった。ここ数戦はリアグリップに苦しんで来て、見つかったセットアップはより効果的にトラクションを探すことに役立つようだ。アッセンは、重要でタフなレースになるだろう。ニューシャーシに応じたベストなセットアップに仕上げることにトライしなければいけない」とビニャーレスは新型シャーシをアッセンで投入する。
サテライト勢トップのランキング6位にポル・エスパルガロ(ヤマハ・テック3)。ポル・エスパルガロはここまでの全戦でポイントを獲得している。前戦カタルニアGPでは来季からのKTMへの移籍を発表。アッセンではMoto2時代に1勝を記録しており、昨年は予選5番手から5位入賞を果たしている。
アレイシ・エスパルガロ(スズキ)はランキング7位。エスパルガロはアッセンでは従来型のシャーシを継続使用する見込み。
エクトル・バルベラ(アビンティアレーシング)はドゥカティ勢トップのランキング8位につける。ドゥカティワークス勢ではアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)がランキング9位、アンドレア・イアンノーネがランキング10位、イアンノーネは前戦カタルニアGPでのロレンソへの追突のアクシデントのペナルティにより、今レースは最後尾グリッドからのスタートとなる。
イタリアGPで負傷し、カタルニアGPを欠場したロリス・バズ(アビンティアレーシング)は、今レースも欠場。今回もミケーレ・ピロが代役を務める。
Moto2クラスでは前戦カタルニアGPでアレックス・リンス(カレックス)がランキングトップに浮上。リンスは来年からスズキのライダーとしてMotoGPクラスにステップアップすることが決まった。
サム・ロウズ(カレックス)はランキング2位に後退、リンスとの差は8ポイント。カタルニアGPで優勝したヨハン・ザルコ(カレックス)がロウズと2ポイント差のランキング3位につける。ザルコは昨年のオランダGPのウイナーであり、今レースも優勝候補の筆頭。
前戦カタルニアGPで今季初表彰台となる3位入賞を果たした中上 貴晶(カレックス)はランキング7位に浮上、連続表彰台に期待がかかる。
Moto3クラスではブラッド・ビンダー(KTM)がランキングトップを独走中。前戦カタルニアGPでグランプリ初優勝を達成したホルヘ・ナバーロ(ホンダ)はトレーニング中の転倒で左足を骨折、今レースを欠場することになった。代役にはCEVのMoto3クラスポイントリーダー、ロレンツォ・ダラ・ポルタが起用される。ランキング3位にはベテランのロマーノ・フェナティ(KTM)、ランキング4位にはルーキーのニッコロ・ブレーガ(KTM)が続く。
ランキング20位につける尾野弘樹(ホンダ)は前戦カタルニアGPの決勝で転倒し、左手第二指基節骨を骨折し、手術を受けたため今レースを欠場。ランキング27位の鈴木竜生(マヒンドラ)は前戦カタルニアGPで今季3回目の入賞を果たし、連続入賞に期待がかかる。