F1世界選手権を4回獲得したアラン・プロストが、ヨーロッパGPをテレビで観戦して「失望した」と述べた。テレビ番組として「大失敗だった」というのが、その理由だ。
バクーのストリートサーキットは、ドライバーたちには好評だったが、レースそのものは大きな波乱もなく終わった。プロストは、先週末に自分が見たテレビ放映が基準になるとすれば、もはやF1は新しいファンを獲得できないだろうとまで示唆している。
「私は金曜と土曜のセッションをテレビで見ていなかった。だが、ソーシャルメディアで誰もがあのコースを褒めているのは知っていたので、日曜には大きな期待を持ってテレビのスイッチを入れた」
「しかし、私に言わせれば、あのテレビ放送は大失敗だったね。みんなが口を揃えて褒め称えたサーキットには見えなかった。特にカメラの配置が良くなくて、ショーとしての面白さを台無しにしていた」
「クルマのスピードが感じられるのは、左、右と切り返すコーナーの1カ所だけだった。車載カメラでストレートエンドのブレーキングの場面をとらえても、まるでスピード感がないし、ノイズも聞こえず、ドライビングの難しさが少しも伝わってこなかった」
「初めて見たF1がこれだったら、なんだ、自分がいつも乗っている乗用車の運転と同じじゃないかと思うだろうね。F1のドライビングがいかに難しいものか、うまく視聴者に伝わるように工夫すべきだ。あのテレビ放送は本当に退屈だった」
■新たなファンの獲得について
F1のプロモーターはコース上とコース外の両面で、ショーとしての面白さを増すために努力すべきだと、プロストは考えている。具体的には、サーキットの1周の距離を短めにしたり、観戦に訪れたファンのためにレース以外のエンタテイメントも提供したりすべきだという。
「サーキットをコンパクトにしたほうがいいような気がする。そして、レースはもちろんだが、それ以外の部分でもファンが楽しめるように努力してほしい。チケットも現状よりずっと安くすべきだ。ごく普通の人々が子供連れで来られるような値段でないとね。さらに掘り下げて言えば、トップレベルのレースカテゴリーに出入りできるのは金持ちの人々だけという、いまの雰囲気を打ち消す方法を探さないといけない」
■2017年の新規定について
2017年の新車両規定について、プロストは賛成でもあり反対でもあるという微妙な態度を示した。太いタイヤの復活は歓迎するものの、ダウンフォースを増やすことには反対なのだ。
「ダウンフォースを削って、メカニカルグリップと太いタイヤに頼る比率を高めれば、小規模チームにもメカニカルな工夫やタイヤ戦略で、うまく戦うチャンスが生まれる可能性がある。他のチームとはまったく違うタイヤ選択を可能にしたり、たとえば前輪にソフト、後輪にミディアムといった使い方もできるようにするのもいいかもしれない」
「そうすれば、フォース・インディアあたりが面白い存在になってくるだろう。彼らのようなレベルのチームは、トップチームとは違うタイヤの使い方を考えて、それに合わせたクルマのセットアップができる。競争相手が何をしているかよく見ていて、その裏をかくことを考え、実際にやってのける能力があるんだ」
■コックピット保護デバイス「ハロ」について
来季から導入される予定のコックピット保護デバイス「ハロ」に関して、プロストは基本的には良いことだと考えている。
「あれで救えた命がひとつでもあったのなら、私はイエスと言うよ。見た目にあまり格好良くはないとしても、そのうちに慣れるだろう。正直な気持ちを言えば50/50だが、どちらへ進むべきかと言われれば、採用する方向を選びたい」