今、世界的に注目を集めているのが、アメリカ大統領選挙だ。その中でも共和党の指名を確実にしているドナルド・トランプ候補は、「彼が大統領になるなんて冗談だろう」という声を吹き飛ばしつつある。
イスラム教徒の入国拒否をはじめ、差別的発言、暴力的発言もお構いなし。それでも支持を集め続けているトランプ候補が、もしアメリカの大統領になってしまったらどうなるのだろうか? 経済アナリストの塚澤健二さんに聞くシリーズ、第2回はトランプ旋風の影響について語っていただいた
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もし、ドナルド・トランプがアメリカの大統領になったら、世界はガラっと変わるでしょうね。逆に民主党のヒラリー・クリントンが大統領になれば、現状維持です。方向性は基本的に変わりません。
第1回でも述べたように、リオデジャネイロオリンピック後にマーケットが大きく動くかもしれません。「壊し屋」たるトランプは、そういった社会的な変革期にピッタリの人物です。
その背景には、人々が「偽装経済」に対して苛立ちを覚えているということがあります。昨年、フォルクスワーゲンの排ガス規制の偽装が問題になりましたが、そのような「偽装」がどんどん出てくる。「偽装」まみれだということが人々が分かっていて、トランプが大統領になるとそれを暴露してくれると思っているわけです。
それをできるのは、彼が政治家ではないからでしょう。政治の外にいる人、つまりはアウトサイダーです。アメリカ国民は政治家に任せても期待できないと思っているから、アウトサイダーたるトランプに期待するわけです。
アウトサイダーは常に既得権益を壊し続けてきました。既存の金融業界に対するアウトサイダーといえば、フィンテックです。IT技術を使ってより安い形で使える。原油で言えば、メジャーグループに対して、シェールガスというアウトサイダーが出てきました。それまで牛耳っていた存在がどうしようもなくなってきたときに、アウトサイダーが登場し、一気に覇権を奪います。
トランプのような存在は社会にとってはまさに劇薬です。でも、アメリカ国民は不安定になったほうが良いと思っています。
では、日本はどうかというと、規制を緩和したほうがいいという話は出るものの、既得権益者たちは規制を緩和したくない。そのせめぎ合いが起きているわけですが、安倍政権は既得権益の壁をなかなか崩せないでいるのが現状です。
さて、投資の話に戻すと、既得権益が壊れて得をするのはヘッジファンドです。彼らは下落局面で高いパフォーマンスを上げることができます。
ヘッジファンドが元気なときは、社会の転換点になっていることが多い。だから、私の予測では2016年にはじまり、2017年、2018年は世界経済が混乱する時期になるのですが、彼らが驚異的なパフォーマンスを上げることが考えられます。
世界では大転換するための様々な条件が、2016年後半に揃いつつあります。だから、今こそどのような生き方をしている人が生き延びるのか? そしてどのような志で経営している会社が生き残るのか、真剣に考えるべきでしょう。
(第3回へ続く)
『未来からの警告! 2017年 超恐慌時代の幕が開く』著者:塚澤健二
出版社:集英社