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a crowd of rebellionが見据える、音楽シーンの革新「ラウドとJ-POPを繋ぐトンネルになりたい」

2016年06月22日 21:01  リアルサウンド

リアルサウンド

a crowd of rebellion

 新潟発の5ピース・スクリーモ・バンド、a crowd of rebellionのメジャーでの1stフルアルバム『Xanthium』が完成した。さまざまなリズムパターンとリフとを駆使したカオティックなサウンドで、複雑な展開を繰り返す曲でありながら、聴き手にはインパクトはもちろんエモーショナルなひっかき傷を残していくのがこの5人の音楽。それが今回はさらに極まった形で展開される。


 高速ビートの激情のメタルコアで攻めたかと思えば、ファミコンのピコピコ音で遊びのあるパートが出てきて、最終的にはカタルシスたっぷりのロックオペラへと着地していくような曲もある。小林亮輔のテクニカルなギターとハイトーンのメロディパートで、泣きのある歌を響かせたかと思うと、宮田大作の迫力あるスクリームで嵐を巻き起こす。ラテンビートもあれば、民謡的な祭りのビートもある。次なる展開、次にくる曲が読めない(読ませない)面白さで、1曲が、アルバム全体が壮大なパッチワークとなった作品である。そしてここまでハードコアに突き抜けても、キャッチーなのがa crowd of rebellionの醍醐味でもある。


 今回はリアルサウンドでの初めてのインタビューということで、バンドがどのようなものを志して、この先どんな野望を持っているのかを5人に訊いた。(吉羽さおり)


・「難解さとキャッチーさとのバランスを考えた」(丸山漠)


――1stフルアルバム『Xanthium』がついにリリースとなりますが、今回はa crowd of rebellionの多彩な魅力が詰まったかなり濃い内容になりました。メジャーでの第1弾アルバムとして、ここまでの作品が世に出せるというのは痛快ですね。


宮田大作(以下、宮田):恐ろしい時代になりましたね。


小林亮輔(以下、小林):50パーセント、冒険と言われます(笑)。


――バンドとしても攻めた内容ということですね。


宮田:毎回、攻めていきたいんですよね。今回も無茶しやがったなという感じです。それで、どれくらい自分たちの可能性を広げられるかと挑戦したアルバムです。


――バンドのこれまでのキャリアについてお聞きしたいんですが、結成は2007年ということですね。


宮田:はい。最初は海外で、その当時スクリーモというものが流行りだして――といっても、日本ではあまり流行ってなかったかもしれないですけど。


――2000年代はじめくらいですね。


宮田:そうですねニューメタルから派生して、スクリーモやらメタルコアやらが出てきて。その頃の海外のスクリーモに感化されている俺たちが出会って、作って、そういうバンドを目指したいなと始めたバンドですね。


――もともとボーカルも、メロディパート(小林)とスクリーモパート(宮田)と、別れていたんですか。


小林:僕はもともとa crowd of rebellionの客だったんです。その頃高校生で、かっこいいバンドだなと思ってふつうに観に行っていて。


宮田:最前列で観てたよね。その時は俺が、ギター・ボーカルで。ギターも弾いて、普通のボーカルもシャウトもやっていたんです。


高井佑典(以下、高井):それがある日、ライブ後に「俺、ギターやめるわ」って言いだした(笑)。「3つもできるわけないだろうが!」って。


小林:あとから聞いた話なんですけど、当日の朝は「俺、新しいアンプ買おうと思う」って言ってたらしいんですよ。


高井:そう。「俺、次にこれ買いたいんだよね」って言っていて。ああそうなんだって思っていたら、ライブが終わったら「俺、ギターやめるわ」って。何なんだっていう。


宮田:その日のライブで、ダメだと確信したんでしょうね(笑)。このままではお客さんともあまりコミュニケーションがとれないし。自分が見てきたバンドのボーカルとは違う感じだったんですよね。


――確かにメタルコア、スクリーモの盛り上がりから、ボーカルがひとりのバンドも増えましたもんね。


高井:しかもその日のライブが、SiMとPay money To my Painと対バンだった。


宮田:そうだ。じゃあ、そこで感化されたんですわ(笑)。でも、最初にギターを置いてピンボーカルになった時はひどいもんでしたけどね。


丸山漠(以下、丸山):そこからすぐに、小林を入れたんですよ。


高井:歌えてギターが弾けるやつっていうので、ライブにいちばん前で頭振ってるあいつできるんじゃね?って。


丸山:コピーバンドやってるって言うし。ライブも来ているし、すげえ期待してたんですけどね。最初へたくそで(笑)。


小林:だいたいが、難易度が高すぎるんですよ! 年のせいにしたくないですけど、当時高校2年生で、急に高等なテクニックをやれと言われてもできるわけなくて。2週間くらい学校休んで、ひたすらコピーしていたんです。最初は歌は歌っていなくて、コーラスやシャウトくらいの担当だったんですけど。ある日、「やっちゃえば?」って(笑)。


宮田:きついからやってくれと(笑)。やっぱり、ピンボーカルになっていちばん変わったのが、ライブ中、お客さんとものすごくコミュニケーションをとるようになるんですよ。そこで体力を持っていかれる。ギターを置いて、ピンボーカルになったはいいけど、また新しい課題が増えて。ライブはバンバン入っていたし、これは結構つらいものがあるなと当時は思っていたんです。クリーンなボーカルも高いクオリティで歌えないのはお客さんに申し訳ないなと。それで歌のパートを「亮輔歌ってくれないか」ってお願いしたんです。俺は、お客さんと面と向かって闘うからって。


――こういう形にしようと変わったのでなくて、ライブをするなかで必然的に変化をしていったんですね。


宮田:それが大きかったと思います。どれくらいクオリティの高いものをお客さんに見せられるかを突き詰めていったら、今のこのスタイルになったという感じです。


小林:その役割を分けはじめてから、バンドの認知度も上がりはじめたのかなと思います。


宮田:それでまた曲も変わってきたというか。もっと難解になっていきました(笑)。


丸山:最初はね。でも段々と、このバンドでしかできない音楽をやろうというところから曲作りも変わった気がしますね。難解さとキャッチーさとのバランスを考えるようになった、それこそ、このボーカルふたりはもともとJ-POPが好きなので。


宮田:昔、駅前で19とかゆずを歌っていたこともあります(笑)。


――やはりJ-POPの音楽遺伝子もあるんですね。たしかにそのJ-POP感が、今回はメロディやキャッチーさ、曲の聴かせ方にも、より色濃く出ているように思います。その点は意識的なんですか。


宮田:そうですね。スクリームにしてもサビに対する助走というか。スクリームが主役になることもあるけど、やっぱりサビでどれだけ驚かせるか、インパクトを持たせられるかというコンセプトを元にしてやっているので。サビで、「うわ、こんなに変わるんだ」とか「ここからこうなっちゃうんだ」とか、あるいは「すごくいいメロディだな」とかもありなんですよね。


・「多方面にトゲが出ているアルバム」(小林亮輔)


――a crowd of rebellionではドラマーの高いスキルや、引き出しの多さも要求されるのではと思いますが、近藤さんはいかがですか。


近藤岳(以下、近藤):僕はメンバーからはデスメタルとかブラックメタルとか、超アンダーグラウンドでテクニカルなものが好きだと思われているんですけど。ドラムをはじめたきっかけは実はBUMP OF CHICKENなんですよね。僕が最後にこのバンドに入ったんですけど、加入してからどんどん、どんどん難しくなっている気がするんです。錯覚じゃないよね?


丸山:それは、やってくれるから、そうなっていったんだよね。


宮田:漠は、打ち込みでデモを作るんです。空想の世界で作るから、実際にやるとなるとそこで差が生まれますよね。そこは見ていて思う。でもそれを岳はなんとかして、自分の体だけでやろうとしてる。ドラム叩いてる時、手の数増えてるんじゃないかというくらいに。


高井:一瞬、岳のスタジオ覗いたら、燃え尽きてた(笑)。


宮田:でもそのくらいのものを求められているので、岳のドラムの成長スピードがすごく早い。


近藤:このバンドは、何でもありなので。何でも対応できないとと思って。ほんとにこのバンドはいろいろな音楽を知らないと、表現がすべて中途半端になってしまうので。難しいけど、楽しいんです。


――プログレッシヴな曲では、とくにリズムの重要度が高いし軸になる部分ですもんね。こういう複雑にいろんな音楽が混じり合っているのは、曲を作る丸山さん自身がいろんな音楽を聴いて、ここにアウトプットしているからなんですか。


丸山:そうですね。YouTube漁ってます(笑)。なんでも聴いておこうと思って。


――それは、他にないものを作りたいから?


丸山:ないものを作りたい。あってもなくても、あまり関係はないんですけどね。自分が思う良いものを作りたいというか。自分が聴きたいものを作りたいんですよね。


――そうすると、変化球がたくさん生まれてしまうわけですね。1曲のなかにも、いろんな要素が詰まっていますね。


丸山:アルバムとしてどうなのかっていうくらい(笑)。


宮田:曲ごとにばらばらなんですけど、またその曲のなかでもまた変化していく。地元のバンドの先輩に聴かせたら、「この1曲で、4曲くらいできそうだね」と。


――うまくアイテムをばらせば4曲もできるのに、もったいないっていうくらいの感覚ですよね。


宮田:そう言われたのは印象的でしたね。俺らは、これが普通になっているんですよね。俺らは先に行ってます。行っているので、追いついてください。


――アメリカのプログレッシヴ・メタルバンドで、Between the buried and meというバンドがいて、個人的にすごく面白いバンドだと思っていて好きなんですが――。


丸山:ああ、僕も好きですね。


――通じるものがあるんですよね。最近の彼らの作品はスペイシーに寄っていますが、少し前の作品には何でもあり感、いびつな面白さがあって。日本にもこういうバンドいないかなと思っていたんですが、ここにいたかという感じがある。a crowd of rebellionはさらに、その面白さをポップにも昇華しているバンドですね。


宮田:難解にすれば難解にするほど、よりポップさをプラスしなきゃいけないというか。俺たちは、コアな人だけのために作っているわけじゃなく、みんなに聴いてほしいし、みんなの心に届いてほしいし。それにはやっぱり、わかりやすさ、聞きやすさ、可愛らしさ、いろいろあると思うんですけど、それをプラスしなきゃいけないんです。それがいちばん難しいんですよ。


丸山:難解にするっていうのは、難解にすればいいだけなので。わかりづらい曲になるだけなので、そっちのほうが言っちゃえば簡単に作れるんだと思うんです。キャッチーに聞かせるのが、いちばん悩むところで。やらなきゃいけないところだなとは思っていますね。


――アルバムとして、まとまるかなという心配はないんですか?


小林:まとまらせなくてもいいじゃないかと。今回はアルバム・タイトルが「Xanthium」というんですが、これは「オナモミ」という草で、よくみんな子どもの頃にバカ草といって、くっつけて遊んだりしたと思うんです。そのオナモミのように、多方面にトゲが出ているアルバムにもしたいなと思っていたんです。さらに、この中のどの1曲でもいいので、誰かの耳とか心にくっついて離れなければ、それはいいことなんじゃないかなって。あとは花言葉が「粗野」とか「粗暴」というのもあって、好き勝手やっちまおうぜというのもあった。そのコンセプトのもと、あえてまとまらなかったのは正解というか、しかるべきだったんじゃないかなと思ってます。コンセプチュアルにはしたくなかったので。


宮田:前回まではコンセプト的に流れもしっかりときれいに聴けるように作っていたんですけど。今回は1曲、1曲が主人公なんですよね。1曲1曲が、ドラクエ1の主人公、2の主人公って感じで、しかも全員そろってるくらいの。すべて主人公なので、あなたの好きな主人公を選んでくださいというアルバムですね。しかも、みんな強すぎる(笑)。もちろん流れはいいように考えていますけどね。こんなにはちゃめちゃにやらせてもらって、幸せです(笑)。メジャー・デビューしてもこんなに好きなことをやらせてくれる会社なんて、あるのかなって思うくらい。


――レーベルが、音楽をちゃんとおもしろがってくれている?


宮田:感謝ですよね。でもメジャー・デビューをして自分たちで鎖をつけていたところもあったんですよね。無意識のうちに、こうでなきゃいけないとか、心を縛ってやっていた部分も少なからずあったと思うんです。今回はもうその鎖もね。


丸山:パーン!と。


宮田:“今回はパーン!”って書いておいてください(笑)。


小林:歌詞を書いたり、メロディを作る時もキツイことは多少なりともありましたけど、今回は悩みながらも楽しかったんですよね。


――そのパーンとはじけるに至るには、段階的にも何かあったと思いますか。


宮田:前作のEP『Daphne』(2015年)を作っている時は、我々暗い気持ちだったんです。俺と亮輔で歌詞を書いていても、つらい、つらい、っていうのが、全面に出ている感じで。つらいっていうのは、会社やメジャー・デビューがどうとかではなくて、当時自分に起こっている状況、心に起こっている状況がふたりともつらくて、歌詞も暗くなり。漠が持ってくる曲もトーンが低めの曲が多かったんですよね。『Daphne』もすごくいい作品で、大人になったという感覚があったんですけど。でも俺たちはまだ、ここにいくには早いのかなというか。俺たちやっぱまだ、ガキっすっていう(笑)。そういうものを出したかった。それが、解き放たれたアルバムになっているんですよね。


丸山:初期衝動をもう一回呼び起こしたかったという感じですね。いろいろやさぐれてきたけど(笑)。ここにきて、もう一度っていう。


――『Daphne』を作ったことはバンドにも大事な時期だったし、大事な作品にもなったと。


宮田:そうです、『Daphne』があった上での作品なので。『Daphne』は今聴いても、すごくいい作品だし、悲しくなるんですけどね(笑)。悲しくて、ダークな音楽がもともとみんな好きで、その究極体が『Daphne』で。でも俺たちこのまま、ずっと悲しいバンドでやっていくのかなっていう。ちがうよね、もともと俺たちバカだよねって(笑)。くさむら走りまわって、泥だらけになって、時には泣いて、大笑いして、っていうのが俺たちだよねって。子供に戻ったアルバムなんです。


・「どれくらい今の音楽に勝負できるか」(宮田大作)


――このアルバムを引っ提げたツアーはどのような感じになりそうですか。


高井:今回はすべてワンマンですね。15ヵ所、ワンマンでいきます。


宮田:無謀です。はっきり言って無謀なんですけど、そうしていかないと新しいことができないので。


高井:でもa crowd of rebellionは、やっている曲も幅広いのでワンマンが肌に合っているバンドだと思うんです。前作『Daphne』での東名阪のワンマンライブの時も、体感的にはつらかったんですけど、1本のライブを作る過程の面白さもあって、実際にやった後には、もっとこうしたいねというのも出てきた。思ったよりも、みんな手応えがあったんですよね。その前回のワンマンのいい体感があったので、今回の全15ヵ所でツアーをやったら、どうなるだろうというのが楽しみですね。


――今はメジャー・シーンやロック・フェスでもラウド系バンドが多く出て、大きなフィールドで勝負するバンドも増えています。そういうラウドシーンに対して自分たちはこうあるんだというような、意識はありますか。


宮田:とくにないですね。ラウドは好きだし育てられましたけど、別にラウドバンドでいようという気持ちではないんです。俺たちはラウドバンドでもあるし、J-POPバンドでもあるし、ギターロックバンドでもあるし、その時々の俺たちの表情なだけで。怒っていればラウドバンドっぽくなるし(笑)。


小林:悲しんでいればギターロックになったりね。楽しかったらJ-POPだし。


宮田:ラウドシーンやJ-POPシーンに対してのものっていうのはないんですよ。ただa crowd of rebellionがメジャーの世界でどれだけやれるかっていう話なんです。


――シーン的には意識していないということでしたが、バンドとしては将来的にはどのようなビジョンを?


小林:フェスに、絶対に呼ばれるバンドになりたいですね。


宮田:メインステージに行けるくらいにね。それで毎回「呼ばれる」バンドであるという。そこで俺たちが見せるのは、さっきラウドシーンとは関係ないと言いましたけど、今まで育ってきたシーンはラウドのシーンだというのは色濃く残っているので。それを踏まえつつ、どれくらい今の音楽、日本の音楽シーンに勝負できるか、どれくらいの人に浸透させられるか。そこは俺たちの使命だと思ってやっています。まったく激しい音楽を聴いたことがない人にも「面白いな、こんな音楽があるんだ」と思わせられるかは、重視してやっているので、ラウドとJ-POPを繋ぐトンネル、ラウドとギターロックを繋ぐトンネル、そういうバンドになりたいですね。


――ある意味、ラウドと、J-POPシーンが分断されている感もある。


宮田:そうですね。でもそういうほうが燃えるんですよ。そこで観てる人たちに「こいつら超かっけえ」「負けました」と言わせたいんです。「あなたたちの勝ちです」とね。(取材・文=吉羽さおり)