陸上自衛隊大久保駐屯地(京都府宇治市)の第3施設大隊に所属する20代の男性幹部自衛官が、所在不明となり欠勤を続けたことを理由に懲戒処分になったと、6月21日の産経新聞が報じている。
この自衛官が欠勤に至ったのには理由がある。昨年5月11日、派遣先の千僧駐屯地で部下の隊員2人(いずれも懲戒免職)から暴行を受けていたのだ。自衛官は、「職務に関して自信を失い、長期間所在不明になれば退職できると考えた」と話したという。
「叩き上げによる新任士官への嫌がらせか…」
この事件の詳細について触れている3月29日の産経新聞の記事によれば、懲戒免職となっているのは34歳の3等陸曹と23歳の陸士長。他、6人が停職や減給の処分を受けている。暴行の内容については、
「熱いラーメンを入れた紙コップの汁をかけたり、土下座させて足で踏みつけて暴行を加え、10日間のけがをさせた」
とある。幹部自衛官が20代のため、暴行を加えた1人は確実に「年上の部下」ということになる。そのため、ネットでは階級が下の年上の部下が年下の上司に対して嫌がらせを行ったのではないか、といった見方が相次いだ。
「叩き上げによる新任士官への嫌がらせか…」
「学歴主義の弊害っやなコレは。現場の叩き上げのおっさんの上司が20代の大学でたての若造が普通の世界やし」
「この若い幹部自衛官の上官は何やってたの?」という指摘も
また、そういった構造が歪みを生み出すことを考慮して、サポートを行っておくべきだったという意見もあがっていた。
「20代では部下はつけないほうが良いと思う 部下にやられたってのが精神的にもつらかったんだろうし ヒラならここまでにはならなかっただろう まずは精神を図太くする訓練から行ってから幹部にすべき」
「この若い幹部自衛官の上官は何やってたの? 年齢構成がいびつになってるんだから若者には重点的にサポートしてやらないと」
とはいえ、その後姿をくらましてしまった幹部自衛官自身に対しても、「バックレてそのまま辞めるとかバイトでも許されないのに 国家公務員が情けない」と非難する声や、「こんな人らに国を守れるの?」と心配する声もあった。
階級の厳しい自衛隊だからこそ年上部下の不満が露わになったともいえそうだが、一般企業に置き換えて、「高卒先輩社員が、大卒後輩社員を目の敵にして精神的に潰れるまで徹底的に嫌がらせするとか。ありそうではあるなあ」という人もいた。
年下上司と仕事をした人の6割「仕事がしづらい」
実際、年功序列制度が崩れたり、転職が当たりまえになってきているため、一般企業であっても年下の上司と仕事をする機会がある人は多い。6月15日にエン・ジャパンが発表した「年下上司」についてのアンケート結果によれば、66%の人が年下上司と仕事をしたことがあるという。また、そのうち58%が「仕事がしづらい」と回答している。
一方で、「仕事をしやすい」と感じた人は、年下上司が「謙虚な姿勢」(48%)、「人の意見を柔軟に受け入れる」(41%)といった態度であったことを理由にあげている。一般企業であっても年上部下と年下上司が上手くやっていくには意識の差があるようだ。
自衛隊では、一昨年も50代の男性准陸尉が遅刻した上官を暴行して停職処分になったことが話題になったが、こちらも年下上司と年上部下の関係性であったと推測されている。
自衛隊では、防衛大出身なら若くして部下を持つことになる。階級を盾に上下関係を徹底させることもできるが、それだけでは組織はまとまらない。貴重な人材を潰さないためにも周囲がフォローすることが不可欠ではないだろうか。
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