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2.5次元コスプレダンスユニット アルスマグナの人気の秘密を考える

2016年06月22日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

アルスマグナ『サンバDEわっしょい! feat.九瓏幸子』(通常盤)

 由緒正しき全寮制の共学高校「私立九瓏ノ主(クロノス)学園」を舞台に活動する、2.5次元コスプレダンスユニットのアルスマグナが、今アツい。動画サイトの“踊ってみた”で一躍有名になり、ボーカロイド曲の「ギガンティックO.T.N」に合わせて踊った動画は、100万再生を突破。「2.5次元アイドル」という地位を確立した。そんなアルスマグナは、神生アキラ・泉奏・朴ウィト・榊原タツキ・九瓏ケント・コンスタンティンという、九瓏ノ主学園の1~3年生、化学教諭、ぬいぐるみの5人と1匹で構成されているグループだ。2015年2月18日に1stシングル『ミクロ乃ハナ』とヒストリーアルバム『アルスマグナ In The Box』でメジャーデビューを果たした、彼らの活躍は目覚ましい。これまで4枚のシングルを発表しているが、全て音楽番組やアニメのテーマソングとしてタイアップを獲得している。また、2016年1月3日には『ARSMAGNA Special Live 私立九瓏ノ主学園『迎春際』』を開催。メジャーデビューから1年足らずで日本武道館でのライブを実現し、約7000人のファンを熱狂させた。今秋にはアルスマグナ主演の映画も公開予定とのこと。踊り手ファンを中心に、人気を集めるアルスマグナ。今回は、彼らの人気の秘密を考えてみたいと思う。


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 アルスマグナの人気の要因は、いくつか考えられる。まず、コスプレとよく練られた世界観だ。「コスプレイヤーはタレントとして売れない」という説があるが、これは扮するキャラクターありきになってしまうため、メディアに露出した際にキャラクター以上のものが発揮できないからである。しかし、彼らの場合は設定がオリジナルであるため、コスプレ自体が武器となっているのだ。さらに、メンバー一人ひとりのキャラクターも、ターゲット層と考えられるサブカル好きの若い女性の好みを把握した上で考えられている。「やんちゃキャラ」「クールキャラ」「韓流ハーフキャラ」「甘えん坊キャラ」「白衣を着た先生キャラ」…、これらは乙女ゲームキャラの定番とも共通するキャラクタライズだ。


 この世界観も然ることながら、彼らはさらに人気の要因となる強みを持っている。まずは、パフォーマンス力。特に、アルスマグナがブレイクしたきっかけとなったダンスは、一見の価値ありだ。5人全員が高いダンススキルを持っており、シンクロ率の高さは尋常ではない。細かくダイナミックな振りが多いのも特徴で、それを一糸乱れず披露することで、かなりのインパクトを生み出している。メンバーのソロ曲では、残りのメンバーがバックダンスをすることもあるのだが、全員が一定レベル以上のダンススキルを持っているため、5人でのパフォーマンスと比べても迫力が減ることがないのだ。こうして本格的なダンスを披露すると共に、「2.5次元アイドル」らしく各々の個性を活かした甘い言葉を囁くというパフォーマンスも定番になりつつある。


 さらに、彼らの楽曲についても言及しておきたい。ボーカロイドの曲に合わせて踊ったことから知名度を上げていってグループらしく、アップテンポでデジタルサウンドが目立つ曲が多い。それは、“良い楽曲”、“高い歌唱力”だけで売れることが難しい現代の音楽シーンが影響しているように思う。一昔前よりも容姿やビジュアルのインパクト、ワクワク感が求められているのではないだろうか。アルスマグナは、容姿もインパクトもワクワク感もすでに持ち合わせている。その魅力をダンスを通して最大化するために、“ノれる曲”をチョイスしているのではないだろうか。しかし、2016年3月9日に発売した4thシングル曲「マシュマロ」は切ないバラードだった。企画アーティストではなく、本当に実力のあるアーティストだからこそ、アップテンポ一辺倒ではないというアピールもできている。


 アルスマグナを代表とする“踊り手”のファン層は、10~20代がメインだ。純粋に歌唱力や楽曲が評価されるケースが多かった70~90年代を生きた30代以上よりも、アーティストを総合的に見る傾向がある。また、乙女ゲームの台頭や、アニメの一般化という時代背景もあり、これまでよりも2次元に抵抗がない人も多いと考えられる。アルスマグナは、ファン層の心理や時代の流れを上手く汲んでいるアーティストと言えよう。来る7月13日には、大御所歌手である小林幸子とコラボレーションをした5thシングル『サンバDEわっしょい! feat.九瓏幸子』も発売。今後、さらに知名度を上げ、脚光を浴びていくグループになるだろう。(高橋梓)