東京五輪を前に、宿泊施設の不足が大問題になっている。政府は今月、「民泊」の全面解禁を閣議決定したが、ホテル・旅館業界から反対の声があがり調整が難航している。そこで白羽の矢が立ったのは、なんと「ラブホテル」だという。
おもにカップルでの利用を想定し、「ブティックホテル」「ファッションホテル」「レジャーホテル」などとも呼ばれる施設が、問題をどう解決するのか。6月16日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、この奇策を取材していた。(ライター:okei)
稼働率の高い「普通のホテル」への改装を後押し
全国で約1万2000店ともされるラブホテルの平均稼働率は、平日で約4割。平均7~8割で推移するビジネスホテルやシティホテルより余裕がある。しかしラブホテルは風営法で18歳未満の利用が禁止され、家族連れが泊まることができない。
そんな中、今年4月に菅官房長官の指示である通達が発せられた。日本政策金融公庫に対し、ラブホテルの改装費を積極的に融資するように、との内容だ。菅官房長官はテレビ東京の取材に対し、こう説明した。
「2月の上旬にすぐに宿泊施設が不足したため、指示しました。ラブホテルを普通のホテルに仕様を改装して、外国人観光客の宿泊施設にする」
「ラブホテルは融資を民間の金融機関から受けるのが難しいので、政府系金融機関から呼び水にする」
ラブホテルの改装は派手なネオンなどを外し、大きなベッドを家族向けのツインにするなど1棟当たり数千万円が必要だ。しかし金融機関はラブホテルに良い印象を持っておらず、積極的に融資してくれることがなかった。
公序良俗に反する業者は対象外だが、今後は健全な業者が改装に踏み切る場合は政府系金融機関の融資を受けられることになる。菅氏は「世界で最も観光客の多いフランスと匹敵するくらい、あるいはそれ以上に日本には魅力がある」「(2020年に訪日外国人数4000万人という)目標に対応できるよう宿泊施設も整備していきたい」と語っていた。
外国人には「スシ、ジャグジー、ラブホテル!」と人気だが
日本のラブホテルは、いま外国人観光客に人気だ。あるポルトガル人のカップルは、日本旅行の貴重な経験として「スシ、ジャグジー(風呂)、ラブホテル!」と楽しそうに語り、中国人の若い女性客は「友人に勧められたの。かわいくて面白いわ」と笑う。カナダ人の中年夫婦も変わった雰囲気に満足した様子で、カラオケを楽しんでいた。
このような訪日外国人の増加で客数が増えてはいるものの、ラブホテルの稼働率はやはり高いとはいえない。全国で32店舗のラブホテルを経営するビッググループの金沢孝晃会長は、今後の方針をこう明かす。
「稼働率は平均して半分ほど。アジアの方は家族連れの方が多い。18歳未満も来られるようにしたほうが、インバウンド客をたくさん入れられる」
金沢さんは、自己資金で奈良にある1棟を改装。常設フロントを作り、ベッドを変えるなどして風営法の適用を外れ、18歳未満でも利用できるようにしたところ、アジアからの団体客が押し寄せる人気のホテルに変身した。
今後、32あるラブホテルの半数を、ビジネスホテルなどへ業態転換させる方針だという。ラブホ好きの外国人にとっては寂しいかもしれないが、1980年代の大ブームに建設した施設は老朽化しているところも多く、この流れに乗る業者は増えそうだ。
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