トップへ

今宮純の決勝インプレッション:ハミルトンを突き放した、ロズベルグの対応力

2016年06月20日 23:21  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

写真
初めてのバクー市街戦は土曜まで多発したコース上の混乱もなく、ポールポジションのニコ・ロズベルグが51周、完全勝利をおさめた。ルイス・ハミルトンに対して、第6戦モナコGP終了時点と同じ24点リードに戻した意味は大きい。先週カナダGPでのスピン、5位の敗北から、すぐに立ち直った。

「マシンと一体化できていた」と表現したロズベルグは、この高速ストリートコースとも一体化していた。1回ストップ戦略を実行する21周目までに20秒以上のセーフティーリード。背後を気にせず、単独走行になったとき、今年の彼は、とても丁寧な周回を重ねていく。そこが、いままでと違うように映る。

 ソフトタイヤへの交換後、周回遅れが現れると1分47秒ペースが49秒台に落ち、31周目には51秒台まで低下した。4秒弱もダウンしたことが気になったが、このころパワーユニットのセッティング・モードに異変が起きていたことが、のちに明らかになった。ハミルトンは26周目から再三無線で異変を訴え、2台とも同じころに同じ事態に直面。だが、チーム側の説明によると「ロズベルグはハミルトンよりも数周早くコクピット内で対応できた」ので、34周目から1分47秒台のペースに回復、48周目には今季4度目の最速ラップを出し切った。

 独走勝利が確実な最終盤での自己ベストタイムは、タイヤもブレーキも完調、パワーユニットの温度や燃費もすべて正常、彼自身の体力もパーフェクトであったからだ。細かなバンプが潜み、壁ぎわの圧迫感にさらされながらバクーのコースを駆け抜けたロズベルグ。表彰台で演じるジャンピング・ポーズ、トロフィーをかざす姿を、ここでまた決めた。
 
 シーズン中盤を迎え、メルセデス、フェラーリ、フォース・インディア、ウイリアムズ、レッドブル、現在のトップ5チームがそろって入賞したのは今年初めてのこと。ひときわフォース・インディア勢が光り、セルジオ・ペレス7位→3位、ヒュルケンベルグ12位→9位で、3戦連続のダブル入賞。モナコ、カナダ、バクーとコース特性が異なる3戦だけに、価値がある。躍進の理由は初コースに臨むイニシャル・セッティングが的確で、とくにペレスはフリー走行1回目の走りはじめからハンドリングを絶賛していた。すべりやすい路面に多くのチームとドライバーがリヤの挙動に手こずっていたが、フォース・インディアの挙動は唐突ではなく、攻め入るリズムをつかんでいた。

 ところがペレスはフリー走行3回目でクラッシュ、15コーナーのミスを自己批判せねばならなくなった。それによって限界をつかんだものの、代償としてギヤボックス交換ペナルティを受けねばならず、チームスタッフに緊急修復作業を強いることに……。彼自身は予選を前に、メンタルの“修復作業”が必要だったはずだ。クラッシュした直後、すぐアタック・モードにスイッチが入るかどうか。そこに注目していると予選Q1で3位、Q2も3位、Q3に2位タイムへと高めていった。開幕から不運があっても、すべて完走してきている今年のペレスの芯の強さ、たくましさを再認識する。それはレース最終ラップにキミ・ライコネンをとらえ、きっぱり抜いて3位でゴールした場面にも言える。

 現在フォース・インディアはコンストラクターズ・ランキング5位。昨年の8戦終了時点と同じでも、獲得ポイントは31点から59点と倍増に近い。直近のライバル、4位ウイリアムズに31点差、じわじわと接近中である。