6月18~19日に開催された第84回ル・マン24時間耐久レースでは、5ワークスが激突したLM-GTEプロクラスでも激しい戦いが展開された。優勝を飾ったのは、ジョーイ・ハンド/ディルク・ミューラー/セバスチャン・ブルデー組68号車フォードGTだった。
1966年、買収交渉が決裂したフェラーリを倒すべくル・マン24時間に投入されたフォードGT40。ブルース・マクラーレン/クリス・エイモン組が優勝を飾った逸話は、その後も長きにわたりル・マンの歴史に残っている。そんな歴史的勝利から50年を経て、クラス優勝ながらふたたびル・マンのウイナーにフォードの名が記された。
初勝利から50年を祝うべく、16年後半に販売が予定されている新型フォードGTをベースとし、2016年からの新レギュレーションにいち早く対応し製作されたマシンは、2015年のル・マンでお披露目され、その後開発が進められてきた。インディカーの名門チップ・ガナッシがオペレーションを担当し、4台を投じる巨大なプロジェクトで16年のル・マンに挑んできた。
迎えたレースでは、同じアメリカのリシ・コンペティツォーネが走らせる82号車フェラーリ488 GTEとの一騎討ちとなり、50年前を彷彿とさせる展開となったが、68号車フォードGTが優勝。ル・マン復帰1年目で勝利を飾った。
「これはフォード・モーターカンパニーにとって、歴史的な瞬間だ」と語るのは、エグゼクティブチェアマンを務めるビル・フォード。
「我々はあえて、1966年の勝利から50年後に、世界で最も厳しい戦いが展開されるル・マンに戻り勝利を飾ることを夢見てきた。フィニッシュラインを横切るフォードGTを見たときの誇りは、言い表せないものだ」
「チームはマシンをデザインし、製作し、レースで戦い、そしてこの結果をもたらしてくれた。すべてのメンバーを誇りに感じている」
また、この勝利はドライバーのひとりであるブルデーにとっても特別なものとなった。ル・マンで生まれたブルデーは、これまでル・マン24時間に挑戦を続けてきたものの、プジョーとともに挑んだ2007年~11年は最高位は2位どまり。今回が初勝利となった。
「こんなことが起きるなんて、まだ信じられない気持ちだ」とブルデー。
「多くの努力と、そして感情がひとつになって勝利に結びつけることができた。フォードと関わったすべての人々が特別だ。今日、ふたたびフェラーリとフォードの戦いが展開された。そしてそれを制して表彰台の頂点に立つのは素晴らしい気分だよ」
今回の勝利はまた、オーナーのチップ・ガナッシにとってもまたひとつ偉業が成し遂げられることになった。ガナッシはオーナーとして、インディ500、デイトナ500、デイトナ24時間、セブリング12時間、そしてル・マン24時間を制した唯一の人物となった。