第84回ル・マン24時間耐久レースは6月19日ゴールを迎えたが、フィニッシュ3分前に首位を快走していた中嶋一貴駆る5号車トヨタTS050ハイブリッドがストップするまさかの結末となった。その展開に対し、ライバルのドライバーたちも驚きと悲しみの声を上げている。
悲願の初勝利に向けて、チェッカー間際まで首位を快走していた5号車トヨタ。しかし、あと1周するかしないかという残り6分というところで、ユノディエールを走っていた一貴から「ノーパワー!」と異変を伝える無線が入る。
僅差で首位を争っていた2号車ポルシェ919ハイブリッドにかわされてからも、一貴はなんとかチェッカーを受けようとマシンを運んだが、ル・マンのチェッカー周で走らなければならないタイムで戻ってくることができず、完走すらも果たせずレースを終えることとなってしまった。
この結末により3位表彰台に立つことになった8号車アウディR18のオリバー・ジャービスは、ポディウムセレモニーの後「ここに立っているのは奇妙な気分だ」と語った。
「表彰台に立っているべきはトヨタのドライバーたちだ。これは僕たちが表彰台に立ちたかった方法じゃない。もちろん僕たちはハードに戦ったし、自分たちの仕事をした。だけど、これが望んだレースの終わり方じゃないことはみんな同意してくれるはずだ」
「僕は個人的にはトヨタのドライバーたちを良く知るわけじゃない。だけど、彼らのことを思うと内臓がえぐられるような思いだ。僕は自分のあるべき立場で、彼らがハードワークに報われた勝者としてポディウムに立つのを見るべきだったんだ」
「こんなレースは二度と見ることはできないだろう。エンジンにしろターボにしろ、23時間57分走ったものが壊れると誰が思うだろう? 僕の気持ちは自分のパフォーマンスよりもトヨタにあるよ。すごく重たい気持ちだ」
また、トヨタ6号車のフィニッシュドライバーとして2位表彰台に立ったステファン・サラザンは「僕たちは2015年から大きなステップアップをして、素晴らしいクルマを作り上げたんだ。どちらのクルマも速かったんだよ」と語った。
「何が起きたかは分からない。彼(一貴)は僕を待って、フィニッシュに向けて一緒に走るのだと思ったんだ。でも彼は問題を抱えていたので、オーバーテイクした。これがル・マンでレースをするということなんだと思う。でも、こんな結末は悲しいよ」
また、サラザンのチームメイトであるマイク・コンウェイはこう付け加えた。
「一貴は動けなかった。本当に心が痛い。彼らは勝利にふさわしかった。でもこれがレースなんだ。最後の最後まで何が起きるか分からない」
優勝を飾った2号車ポルシェ919ハイブリッドのロマン・デュマは「僕たちはみんなトヨタのことを悲しんでいる」と語った。
「僕たちにはチャンスがないと思っていたので、何が起きたのか分からなかったんだ。誰も予測していなかったよ」
「すべての人々がずっとこの先の未来、このレースを忘れることはないだろうね」