ルイス・ハミルトンによれば、メルセデスのシミュレーターでドライブしても、コンピューターゲームをプレイしても、サーキットについて学べることは「それほど違わない」という。
近年のF1では、サーキットでのテストが規則で厳しく制限されていることもあり、シミュレーターは必要不可欠なツールと言っても過言ではない。しかし、メルセデスのチームメイト、ニコ・ロズベルグは、メルセデスが作成した新しいバクーのストリートサーキットのシミュレーションには、いくつかの部分で「違和感があった」と語っている。そしてハミルトンも、このツールの限界を感じて、今週末のヨーロッパGPまでにシミュレーターではわずか8周しか走らなかったという。
「僕はあまりシミュレーターには乗らない。まだ完璧とは言えないからだ。もちろん、さらに改善しようと努力はしているけどね」とハミルトンは言う。
「とにかくシミュレーターで長時間を過ごすことはない。マクラーレン時代にイヤというほどやらされたしね。100ポンドで買えるプレイステーションでも、同じくらいのことは学べるよ」
シミュレーターはドライバーよりも、むしろエンジニアたちの役に立つと、ハミルトンは考えている。シミュレーターでは、実際にクルマを走らせるときの身体的な感覚を完全に再現することはできないからだ。
「シミュレーターでのドライブは、やはりホンモノと同じではないね。まずシミュレーターでは気持ちが高ぶらない。それにシミュレーターに乗るときは、自分の感覚をシミュレーターに合わせる必要があるけど、クルマに乗るときにはそんなことは考えない。ただドライブするだけだ。そして、自分の感覚をどこまで合わせていこうと、結局シミュレーターではマシンの動きや路面のバンプを実物のようには感じられない」
「日曜にあるコースでレースをしたあと、月曜にシミュレーターで同じコースを走ってみると、あったはずのバンプはないし、縁石の形状も違ったりして、同じスピードにはならないんだ。それにシミュレーターではスピード感が希薄で、身体的な感覚に伝わってくるものがない」
「燃料消費とか、パワーの使い方とか、空力とかの面で、エンジニアはいろいろ学べるだろうけどね」
また、ハミルトンは最近ではコースを歩いて回ることもなくなったと明かしている。グランプリの週末にドライバーがスタッフと一緒にコースを歩くことは、多くのチームで習慣になっている。
「フォーミュラ・ルノーの時代から、F1での3年目か4年目くらいまでは、僕もコースを歩いていた。だけど、歩いてみたからといって、その週末の何かが変わるわけではなかった。実際、2010年あたりから歩くのはやめてしまったけど、何の問題もないよ。他のドライバーにとっては役に立つのかもしれないが、僕にはあまり意味がないんだ」