先日よりお伝えしているSCCA(スポーツ・カー・クラブ・オブ・アメリカ)が主宰する『ワールド・チャレンジ』の概況だが、トップカテゴリーたるGTクラスで、マクラーレン650SやキャデラックATS.V.R、シボレー・コルベット、ダッジ・バイパー、ランボルギーニ・ウラカンにメルセデスAMG GTといった錚々たるGT3マシンを相手に戦いを続けている日本のマニュファクチャラー製の“高級サルーン”の存在をご存知だろうか?
北米ホンダの高級ブランドである『アキュラ』がラインアップする最上級セダンTLXをベースに開発された『アキュラTLX-GT』だ。
長年、アキュラのワークス的存在でレース活動を続けるウィスコンシン州ベースのリアルタイム・レーシング(RTR)が造り上げたマシンは、それまでも下位クラスなどで参戦を続けてきたノウハウを活かして、2014年にトップカテゴリーへの挑戦を開始。そのベースモデルとして選んだのが、TLXだった。
「2015アキュラTLXは真の高級スポーツセダンだ。ピレリ・ワールド・チャレンジで世界中の高級スポーツカーたちと競争するために、あらゆる部分をレース仕様にフィッティングさせる努力を行った」と語るのは、HPDのプレジデントであるアートセント・シル氏。
HPDとアメリカン・ホンダ、そしてRTRが共同で造り上げたマシンは、HPDが設計・デザインを行ったレーシングシャシーに、GTクラス規定の空力パーツを装着。フルロールケージを組み込み、ボンネットとルーフはカーボン製に置換。市販モデルに搭載されている自然吸気V6のJ35Z3型をベースに、直噴ツインターボとしたエンジンを搭載し、500PS以上のパワーを発生。前後マルチリンクにはペンスキー製ダンパーとアイバッハのスプリングを組み込み、ホンダ自慢のSH-AWD機構を用いた4WDマシンとなっている。
RTRの代表でもあり、エースドライバーも務めるピーター・カニンガムは「ホンダとアキュラとともに戦ってきたこの27年間のレース活動で、レースに勝つために必要なものは何かを明確に理解している。それを念頭に置いてマシン開発をしてきた」と語る。
参戦を開始した2014年以降、年々性能が劇的に向上していく世界のスーパースポーツGT3勢を相手に、昨季はポールポジションと優勝も経験。今季開催の第8ラウンドでは3位表彰台を獲得するなど、つねに上位を争う戦いをみせている。