ヨーロッパGPのFIA木曜ドライバー会見は、初開催とあってバクー・シティ・サーキットに関する話題で盛りだくさんの楽しい会見となりました。
このグランプリのアンバサダーを務めているフェルナンド・アロンソは、すでに今年3月にバクーを訪問。「あの時は、まだ寒くてジャケットを着ていたけど、こんなに暑くなったし、グランドスタンドもピットガレージもしっかり準備が整ったね」と語ると、司会者は出席した各ドライバーにコースの印象を質問。コースの狭さやランオフエリアの少なさを指摘する声もありましたが、公式会見ということもあって各ドライバーとも当たり障りのない答えでした。
どのチームもシミュレーターで走り込んで準備をしてきているわけですが、「何周くらい走った?」という質問には新人リオ・ハリアントが「80周くらいかな」、カルロス・サインツJr.は「長いサーキットだから、あんまり走れないし80周~100周の間かな」と通常よりは少ないことを示唆。バルテリ・ボッタスは「レースディスタンスと、もう少しくらい」、セバスチャン・ベッテルは「50~100周の間くらい? 70周くらいかも」と曖昧な答え。ニコ・ヒュルケンベルグは「ゼロ」と恥ずかしそうに答え、アロンソは「ゼロ、全然やってない」と堂々と回答。
なぜヒュルケンベルグが恥ずかしげに答えたかというと、やりたくてもできなかったからです。フォース・インディアは新たに「レッドブルと同等か、それ以上のシミュレーター」を導入したばかり。でもサーキットごとのCADデータは、ひとつ何百万円もする高価なもので、資金潤沢でないフォース・インディアはすべて買うことができず、バクー・シティ・サーキットはシミュレーターで走ることができなかったというわけです。
初開催のサーキットで「何周くらい走ればコースを覚えられる?」という質問には、ボッタスが「FP1(フリー走行1回目)の2度目のランくらいまでには最適な走りができるようになる」、ヒュルケンベルグは「走るほど、どんどん速くなるけど、基本的には10周くらいでかなり良いレベルには到達する」と回答。そこで「と、言われていますがフェルナンドはどうですか?」と司会者に聞かれて「2周!」と言い張るアロンソ。そこに隣席のベッテルが「じゃあ僕は1周半!」と悪ノリして、アロンソも「じゃあ1周だ!」と畳みかけて会場は爆笑に。
F1ドライバーたるもの初開催で、なおかつ前例のない狭さの市街地サーキットにも臆することなく冗談を飛ばせるくらいでなければいけません。そんな懐の深さとフォース・インディアのフトコロの寒さを感じたバクーの木曜会見でした。