2016年06月17日 10:51 弁護士ドットコム
前を走っているミニバンをあおっていたら警察につかまったーー。そんな投稿がネット上の掲示板で話題になった。
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投稿者は、高速道路で前を走行していたミニバンに対し、「トロトロ走っていてイラつく」という理由で車間距離をつめる「あおり運転」をして警察につかまった。交通違反の切符も切られたようだが、「絶対に金は払わない」「反則金の紙は破って捨ててやったわ(笑) 」と言い切っている。
あおり運転は法的にどのような問題があるのだろうか。反則金を支払わないと、その後どんな手続が待っているのか。平岡将人弁護士に聞いた。
「前を走行する車との車間距離を極端につめる『あおり運転』は、道路交通法に違反する行為です。
道路交通法26条は、前の車両が急に停止した場合でも、追突を避けるために必要な距離を保たなければならないと規定しています。
この車間距離保持違反には罰則があります。一般道路の場合は、道路の場合は5万円以下の罰金ですが、高速道路の場合には罪も重くなり、3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金が科されます。
この車間距離の保持は、後ろに追従する車の義務です。前を走る車の速度に関係なく、追従車は前車から必要な距離を保たなくてはなりません。
したがって、前に走る車がトロトロ走っていても、追従する車は車間距離を保たねばなりません」
必要とされる車間距離は、具体的にはどの程度なのか。
「走行速度や自動車大きさ、積荷の程度によって異なります。たとえば、晴れの日の場合に時速40キロメートルの場合には15メートル程度は距離が必要だとされているようです。
また、もしひどいあおり行為が原因で事故となり、死傷者が出てしまった場合、『妨害運転』として通常よりも重い15年以下の懲役刑が科せられる可能性があります(自動車運転死傷行為処罰法)」
投稿者は「反則金を支払わない」と決意しているようだが。
「違反切符をきられて反則金をおさめる仕組みを『交通反則通告制度』といいます。
これは、道路交通法違反の罪のうち、軽微なものは、通常の刑事手続で罪を問うのではなく、簡易迅速な行政手続である反則金の納付で事件を終結させようという制度です。
いわば、交通違反者が刑事責任を問われない機会を与える制度です」
反則金を支払わないと、裁判にかけられることになるのか。
「法律によると、反則金の通告があった場合には、それをおさめることで、公訴権(刑事訴追権)は消滅します。また、納付期間が経過しないと、検察は裁判を提起できないことになっています。
したがって、反則金の納付をしないままでいた場合には、納付期間が経過した後、原則通り刑事手続きによって公訴を提起されることがあります。有罪判決を受ければ、先ほど述べたように、罰金刑や懲役刑が科されることになります」
もし、「自分は交通違反をしていない、無罪だ」と主張したい場合は、どうすればいいのか。
「その場合、違反事実を認める旨のサインを求められても拒否し、通告された反則金を納付しないでいれば、原則に戻って刑事手続きが開始されることになるので、そこで無罪を主張することになります。
一方、いったん反則金を納付してしまうと、後で交通違反の成否を争うことはできないと考えられています
つまり、『自分は交通違反をしていない、無罪だ』と主張したいのであれば、反則金をおさめずに、その後の刑事手続で争う必要があるということです」
平岡弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
平岡 将人(ひらおか・まさと)弁護士
中央大学法学部卒。平成26年8月より全国で7事務所を展開する弁護士法人サリュの代表弁護士に就任。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。
事務所名:弁護士法人サリュ大宮事務所
事務所URL:http://legalpro.jp/