マクラーレン・ホンダはシーズン前半戦が終了した後、2017年ドライバーラインアップについての協議を本格的に開始する予定だ。来季、フェルナンド・アロンソの残留は決まっているが、そのチームメイトとしてジェンソン・バトンとストフェル・バンドーンのどちらを選ぶかをチームは決断しなければならない。
アロンソは2017年末までの契約を結んでいるが、バトンの現在の契約期間は今季末までとなっている。
リザーブドライバーのバンドーンは今年負傷したアロンソの代役としてバーレーンGPでF1デビューを果たし、予選でバトンより上位を獲得、チームの今季初ポイント1点を持ち帰ってみせた。
■バンドーンはマクラーレンにこだわるよりF1昇格を優先
2015年のGP2チャンピオンであるバンドーンは今年はマクラーレンのリザーブドライバーを務めながら日本のスーパーフォーミュラを戦い、来季マクラーレンのレースドライバーに昇格することを目指している。マクラーレンのグループCEOロン・デニスは最近、来年のドライバーラインアップは決まっていないと強調しつつ、バンドーンはライバルチームには渡さないと宣言した。
バンドーンはボスのこういった発言をポジティブに受け止めている。
「そういう発言を聞けるのは嬉しいことだ」とバンドーンはカナダで語った。
「僕の目標は変わらない。来年F1に行く必要がある。ここ(マクラーレン)にいられるよう全力を尽くしているけれど、今のところ保証はない」
「マクラーレン・ホンダにとても満足している。来年ここでシートを得られることを願っている。でも他のチームからたくさん関心が寄せられているのも事実だ。いずれにしても来年はF1のグリッドにつきたい。そのために努力している」
このコメントは、バンドーンはマクラーレンをいつまでも待ち続ける気はなく、もし来年昇格されなければ他に行くという意志表明のように聞こえる。マクラーレンは高い評価を受けているバンドーンを失うことは避けたいはずだ。
もしマクラーレンがバトンを残留させたい場合、バンドーンを他チームに貸し出すという方法も考えられる。今年メルセデスがパスカル・ウェーレインをマノーで走らせているようにだ。
そうすればバンドーンは比較的プレッシャーのない状態でF1の経験を培っていくことができる。しかし英AUTOSPORTの情報では、現時点でマクラーレンはそれを現実的なプランとして考えてはいないということだ。
■バトン「経験に勝る要素は何ひとつない」
マクラーレンがバンドーンを失わないために来季レースドライバーに昇格させる場合は、バトンがチームから去ることになる。
しかし2010年からチームに所属するバトンは再び契約を延長することを望んでいる。
2015年から新たにホンダと組んで戦っているマクラーレンは、新たなプロジェクトの中で苦戦を強いられている。しかしホンダは来季に向けて大きな開発プログラムに取り組んでおり、FIAはパワーユニットマニュファクチャラー間のパフォーマンス格差を縮めようとしている。さらに来季は空力の重要度が増す新レギュレーションが導入されるため、マクラーレンはそれを利用して一気に飛躍につなげたいと考えている。
2017年は、2015年以降チームが最も高い競争力を発揮できるチャンスの年であり、昨年からの苦戦に耐え忍んでいるバトンとしては、残りたいところだ。
マクラーレンにとってバトンを選ぶことのメリットは明白だ。彼はチャンピオン経験者であり、マクラーレンやホンダのエンジニアたちと長年働き、幅広い経験を積んでいる。またチームのスポンサーの面でもイギリス出身の彼が存在することはプラスになる。
バトンがアロンソと同等のパフォーマンスを見せ続けることができれば彼を残留させることに何の問題もないはずだ。ただ今年は予選ではアロンソが5対1で勝っており、ポイントでもバトンを13点上回っている。
バトンはF1チームにとってのドライバーの経験の重要性を主張している。
「年齢は関係ない。ハングリーさがあり、高い競争力があり、速さを失ってさえいなければ、経験に勝てる要素は何ひとつないんだ」とバトンはカナダで語った。
「コース上の走り、チームとの作業、マシンセットアップや開発、何に関しても経験より重要な要素はない」
「速く競争力のあるマシンで走る場合は誰であっても比較的楽に仕事ができる。でもマシン開発はそれに比べるとかなり難しい」
「僕がチームオーナーなら、常に経験あるドライバーを選ぶ」
英AUTOSPORTの情報では、マクラーレンは来季ドライバーラインアップについての協議は8月のサマーブレークまでは行わない見込みだという。今後8週間のうちに6回グランプリが行われる忙しい時期を迎えるため、コース上の戦いに集中するためだ。