F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選ぶ。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。
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☆ ジェンソン・バトン
パワーユニットのトラブルに始まり、あっけなく終わったが初日段階からフェルナンド・アロンソをリード、ブレーキング安定性を優先するセッティングをまとめていた。チームも土曜以降、雨を意識したプラスダウンフォースにしてセクター2のコーナーを重視。予選Q2アタックでは、そこで稼いだものの、2台編隊の後ろについたアロンソがスリップストリームを用いてQ3進出。またまたバトンは「定位置」の予選12位となった。巧くコース特性に合わせていただけに、今季2度目のリタイアが惜しまれる。
☆☆ パスカル・ウェーレイン
敵はザウバー。じりじり追いついてきたマノーの戦意は高く、エースは予選で2台、決勝1台と“撃墜”に成功。周回遅れにされるとき減速すると、タイヤ温度が急激に低下。カーバランスが変化してもコントロールするところに彼自身のポテンシャルがある。抜かれかたから学ぶこともある。
☆☆ エステバン・グティエレス
タイヤ冷え性に悩むハース。フロントのグリップ不足が原因で、前後バランスがコーナーごとに崩れる。ふたりとも相当シビアな状況でも壁際で頑張りぬき、我慢していた彼がモナコに続き、グロージャンに優った。
☆☆ セルジオ・ペレス
スタートでソフトタイヤを選択する策もマクラーレン勢に先行され、想定スティントをカバーするまでに至らず。狭いコース上で後方乱流を浴び続け、得意なタイヤ・マネージメント走法を果たせなかった。それでも貴重な1点、序盤7レースで100%ゴール。昨年から16戦連続完走を続けている。
☆☆☆ カルロス・サインツJr.
チャンピオンだって当たる壁、一度は洗礼を浴びる最終シケイン。逆に言えば、センチメートル単位まで攻め込む気力が試される。予選でミスして20番グリッドから9位まで、壁を恐れずに大胆にいった証だ。キミ・ライコネンを上回る、7位相当の自己ベストタイムもマーク。
☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
4列目ウイリアムズ勢に至近バトルを挑むのが課せられたミッション。1台には逃げられたがもうの1台マッサを追尾、リタイアに追い込み8位入賞でまとめきった。序盤ピリオド、フォースインディア5位通過、夏に向けてメルセデスPUユーザー争いのキーパーソンになるだろう。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
「F1カートコースみたい」と言うだけあって、まさに、すばしっこいステアリングの動きに驚いた。レッドブル3戦目でのラスト10周、ニコ・ロズベルグ攻防戦は見ごたえ十分。いったん相手が下がっても油断せずに、最後のヘアピンから、ずっと左右ミラーで確認。まず鉄則のインサイドをふさぎ、次に来るだろうアウトサイドを予測してラインをずらした、あの動き。すばやいリアクション反応が、ほんのわずか遅れたら、やられていた。勝ったスペインGPよりも濃いバトルだった。
☆☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
いくつも襲う危機を管理した能力に四つ星を。1~2コーナーでルイス・ハミルトンと接触回避、後方集団に落ちてからタイヤ温度管理、さらにマシンのオーバーヒートやブレーキ変調やスローパンクチャーも進行、接戦下で燃費も悪化……これだけピンチにありながらも5位を守り切ったポイントリーダー、防衛戦に価値あり。めげるな、ニコ!
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
中継でも再三触れたようにセクター1が絶対的に強い。ふたつしかないコーナーへのブレーキング突っ込み速度と角度とライン。ここだけで予選2位のロズベルグに0.186秒差。「僕はレイト・ブレーカー(奥までブレーキを遅らせる)」自信ありげにカナダ通算5回目のポールポジションを決め、5勝目。カナダGP絶対本命に金曜から推してきた彼が、寒さにも風にも負けず完勝。9点差からの反撃、見せてもらおう。
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
追いかける2位ベッテルは何度も最終シケインでエスケープへ逃げこんだ。いずれも違う動作だった。ブレーキング開始時点でオーバースピードだとすぐ回避し、旋回途中時点で感じるとラインをぎりぎり選び分けていた。コンマ秒単位の判断、切り抜けるスキルはハミルトンの突っ込み技と同じ、逃げ技がハイレベルで絶妙。チームのタイヤ戦略などレース後に非難があっても、ベッテルの全力疾走2位を、さすがと言おう。“タイヤ戦略ゲーム”の狭間に、F1スポーツあり──。
☆☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス
ベッテルから40秒も離された単独3位表彰台は地味なレース。だが、ここに強いボッタスは4列目、7位から粛々と来ていた。ウルトラソフトからソフトへの1ストップ遂行はハミルトンと彼だけ。1周目/6位~11周目/5位~22周目/3位~23周目ピットインで6位へ~36周目/4位~46周目/3位。この順位アップレースで中盤少しの間に燃料セーブを行っている。ハミルトンよりも長い47周をソフトタイヤでカバーしたマネージメント、後半ラップタイムを1分17秒台にそろえ自己最速タイムと誤差ほぼ0.5秒以内に。ブレーキングは早めに、トラクション重視でアクセリングは早めに、孤独な疾走ベストレース。古豪チームには彼が絶対に必要だ。
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