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反アルコール団体がF1と酒造大手ハイネケンとの契約破棄を要求

2016年06月15日 16:31  AUTOSPORT web

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ハイネケンと巨額の商業契約を結んだバーニー・エクレストン
FIA会長ジャン・トッドが、ヨーロッパの有力な反アルコール・ロビー団体による非難の矢面に立たされている。先週、F1が酒造大手のハイネケンと、大規模なスポンサーシップ契約を結んだためだ。

 欧州アルコール・ポリシー・アライアンス(通称ユーロケア)は、ヨーロッパにおけるアルコールの害や悪影響を予防し、軽減することを目指す、25カ国の民間および公共団体の連合だ。ユーロケアのマリアン・スカー事務総長は、F1がハイネケンと少なくとも4年半、合計1億5000万ポンドの契約を交わしたことに強い不満を覚え、トッドに対して、F1がアルコール飲料の宣伝に協力することに反対するという主旨の公開書簡を送った。
 
 FIAはF1の競技上の統轄機関にすぎず、バーニー・エクレストンがまとめた商業契約には関わっていない。だが、スカーはトッドが道路交通安全に関する国連特使でもあることを考えれば、彼には「注意義務」があると考えているようだ。書簡の写しは、エクレストンや世界保健機構(WHO)のマーガレット・チャン事務局長らにも送付された。
 
 この書簡でスカー事務総長は、ハイネケンの関与が「アルコールと自動車の運転が共存すべきでないことを考えれば、重大な問題」であると断言し、「いまやアルコール飲料のブランドはF1のスポンサーシップの主力になりつつあり、人気の高いモータースポーツと交通死亡事故の主な原因のひとつである飲酒運転を結びつけている」と主張した。

 現在、F1で見られるアルコール飲料のブランドとしては、ハイネケンのほかにマルティーニ(ウイリアムズ)、シャンドンとジョニー・ウォーカー(マクラーレン)、キングフィッシャー(フォース・インディア)がある。
  
 さらにスカー事務総長は、こう述べている。「アルコール飲料の宣伝は、社会に対して、特に若い人々に対して大きな影響力を持っている」

「F1はスポーツイベントというよりも、アルコール飲料のブランドに世界的な露出の機会を与えるためのイベントに近づいている。憂慮すべき点は、F1がアルコール飲料とモータースポーツの間に強い結びつきを作りつつあることだ」

「FIAがこの問題を真剣に受け止め、かつてタバコのスポンサーシップを禁止したように、アルコール飲料のスポンサーシップ契約を破棄することを求めたい。F1の統轄機関であり、シェアホルダーでもあるFIAは、この問題について責任がないとは言えない」
 


 もちろん、ハイネケンも飲酒運転には反対し、「If you drive never drink(乗るなら飲むな)」を広告のスローガンに掲げている。だが、スカー事務総長はハイネケンの存在自体が、彼らの撲滅しようとしている問題を悪化させるのだと主張する。 

「F1はモータースポーツのイベントでありたいのか、アルコール飲料の宣伝イベントでありたいのか、自問してみるべきだ。私たちは2015年のモナコGPのモニタリングを行って、1分間に11回もアルコール飲料のブランドが画面に写ったり、言及されたりしたことを確認している。平均では5秒間に1回という頻度だ。他のブランドに加えて、今度はハイネケンがイベントの冠スポンサーになれば、いったいどうなるだろうか」

「F1とアルコール飲料の製造メーカーは、責任ある企業ないしは団体と見なされたいのであれば、こうした契約を破棄して、F1でのアルコール飲料のスポンサーシップをただちにやめるべきだ」