長年WRC世界ラリー選手権を舞台に参戦を続ける有力プライベーターのマルティン・プロコップが、先週末のイタリア・サルディニア島でのイベントスタート前に、主催者から課せられた5分のタイムペナルティについて反論した。このままではシリーズ参戦自体を再考する必要がある、と警告している。
ことの発端は、WRC第6戦ラリー・イタリアにおいて、彼のフォード・フィエスタRS WRCのトランスミッションシールが車検時に剥がされていた、という点だ。これについて、ジッポカー・チェコ・ナショナルチームのマネージャーを務めるキリル・ミュラーは「ルールに違反しているわけではなく、実装にもなんら問題はなかった。いつもどおりに作業をしていたし、FIA競技規則の理解に完全に従っていた」と説明した。前戦ポルトガルにおいても違法性はなかったと主張している。
現在、プライベーターにはトランスミッションの使用基数に関して年間上限が定められているが、それはイベント間でダメージを修復する作業のためには、封印されたシールを剥がす必要があることを意味している。
「これはアンフェアな話だ。この裁定がマルティンのラリーを奪ってしまった。彼らはペナルティの裁定を待つことだってできたはずだからね。でもそうしなかった。我々はプライベーターで、常に表彰台を争っているわけじゃない。今回の裁定は、我々のようなチームは選手権に必要ない、ということを示している」と、ミュラー。
プロコップは09年のJWRC王者を経て、すでにWRCには117回の出走を数える。先週末のサルディニアでのイベントは最終的に11位で終えたが、ペナルティがなければ8位にチャレンジできていた計算になる。
この経験がWRCへの情熱に複雑な影を落とし始め、今は2回目のダカール・ラリーへの挑戦に向け気持ちが傾いてきた、と話すプロコップ。
「私たちは(FIAと)話をする機会を望んでいた」
「今は他のプロジェクトにも目が向き始めていて、そのことが自分の気持ちにも少し変化を起こし始めている。もうこの場所にはいたくない」
「だから、ダカールに向けてマシンのテストを始めるだろう。8月の終わりのクロスカントリーイベントに向けて、もう少しだけテストを重ねていくことになる」
FIAのラリーディレクターを務めるヤルモ・マホネンは、今回の1件が規約変更の必要性を示している、と認めた。
「レギュレーションは明確でクリアだが、今回はなぜこんな裁定が下されたかを確認する必要がある」とマホネン。
「スチュワードは国際競技規則に従って、競技者の側から任意に新たな証拠提出や問題提起がある場合、規則に従って再検討することを競技者に通知しなければならない」
「コンペティターの不満は理解している」
「今回の件は、私の個人的な見解だが──マニュファクチャラーとプライベーターに同じポリシーを適用できないことを示している。我々は来季に向け、このような制限の仕組みを再検討するよう連携する必要があるだろう」