2016年06月15日 10:31 弁護士ドットコム
総務省は6月14日、「ふるさと納税」による2015年度の地方自治体への寄付額が、前年度比4.3倍の計1652億9102万円となったことを発表した。急増の背景には、返礼品の充実や、減税対象となる寄付額の上限が約2倍に引き上げられたことがあるという。
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自治体別に見ると、もっとも多くの寄付を集めたのは、都城市(宮崎県)。受入額は前年度比8倍超の約42億3100万円で、前回9位から躍進した。2位の焼津市(静岡県)は約38億2600万、3位の天童市(山形県)は約32億2800万円だった。
都城市の場合、返礼品の中心は「畜産物」と「焼酎」だ。ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」を見ると、1万円の寄付でも地元産のA4ランク宮崎牛や黒豚の詰め合わせなど、充実したラインナップになっている。
市のふるさと納税担当者は「ほかにも特産品はありますが、寄付者のニーズなども考えて、肉と焼酎にほぼ限定しています。ふるさと納税は、都城が『日本一の肉と焼酎のふるさと』であることをPRするツールの1つです」と戦略を語る。
都城市は、鹿児島県との県境に位置する全国有数の農業都市。中でも畜産が盛んで、2006年の調査では、牛・豚・鶏肉の生産高がそれぞれ日本一に輝いた。また、「黒霧島」などで知られる霧島酒造も地元の企業。霧島酒造は3年連続で焼酎メーカーの売上高日本一になっている。
「霧島酒造は、よく鹿児島の会社と間違えられるんですよね。そういう部分も含めて、都城といえば、お肉と焼酎。お肉と焼酎と言えば都城と思ってもらえるよう、PRに力を入れています」
市が受けた寄付数はおよそ28万8000件で全国最多。一方、金額の平均は約1万4700円だった。この数字は、受入額ベスト20に入った自治体の中でもっとも低く、PRという市の目的を明確に表しているといえそうだ。
返礼品は、市が委託した地元業者が企画し、最終的に市が選ぶ。返礼品の価値は寄付額の5~6割ほど。市は送料や諸経費などを含め、業者に寄付額のおよそ8割を支払っているという。地場産の食材を扱うため、農家にまで経済波及効果があるのが特徴だ。寄付者の分析にも力を入れており、返礼品の改良を続けた結果、「ふるさと納税ではないけれど買いたい」という問い合わせが増えるなど、販路拡大にもつながっている。
一方、市には2割程度の寄付金が残る。都城市では、寄付のときに「スポーツ・文化振興支援」や「人口減少対策支援」など、使途を選べる仕組みをとっている。もっとも多いのは「子ども支援」で、市は寄付金で放課後児童クラブの増設や、10年ほど行われていなかった中学生の海外交流事業の復活などに使用するという。
担当者は、「たくさんの方に応援していただき、日本一になれました。大変感謝しています」と話している。
(弁護士ドットコムニュース)