2016年06月15日 10:11 弁護士ドットコム
同人誌を製作するなかでの失敗談をつづった「#同人しくじり先生」が、ツイッター上で密かな話題になっている。そんな中、「売り子やります」と連絡してきた人と「音信不通になってしまった」という作者のつぶやきが注目を集めた。
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ツイッターの投稿者(作者)によれば、ネット上で見ず知らずの人から「コス売り子(編集部注:コスプレして同人誌を売ること)募集してますか!」と連絡が入ったそう。それに対して、投稿者は売り子を頼むことにしたという。
その後、応募者から「交通費お願いします!」、「衣装買ってコンビニに送って下さい!」と連絡が入り、投稿者は交通費とコスプレ用の衣装を支給。ところが、それを最後に応募者からの連絡が途絶えてしまい、投稿者が「衣装受け取れましたか!」、「当日よろしくお願いします!」と連絡をしても無視されたという。
このつぶやきに対し、「やはり同じような事はどこでも起きてるのですね」や「詐欺事件だ」などのコメントが寄せられている。連絡がとれなくなった理由は明らかではないが、交通費や衣装を発送させたうえで、意図的に連絡を絶ったのだとすれば、犯罪にあたらないのか。吉田要介弁護士に聞いた。
「売り子をする気がないのに、すると偽って、交通費やコスプレ用の衣装の支給を依頼し、
その支給を受ければ、詐欺罪が成立します。
もっとも、応募者が交通費やコスプレ用の衣装の支給を依頼した時点で、売り子をする気があったのであれば、詐欺の故意はなかったことになります。その後、売り子をすることをやめて、連絡を意図的に絶ったとしても詐欺罪にはなりません。
つまり、交通費やコスプレ用の衣装の支給の前に、売り子をする気があったどうかが詐欺罪の成否をわけるポイントになります」
吉田弁護士はこのように述べる。心の内は簡単には見えないように思われるが、本人が「だますつもりはなかった」と言ったような場合でも、故意があったと認められるのか。
「『だますつもりはなかった』と強弁されても、その言い分が明らかにおかしく、当初から売り子をする気があったとは考えられない事情があれば、詐欺の故意が認められ、詐欺罪が成立します。
具体的には、およそ当日対応できない多数の人に対して交通費やコスプレ用の衣装の支給を依頼したり、当日海外に行く用事があるなど、当日売り子をすることができないことが明らかな場合や、何度もこうしたことを繰り返している場合などです。
こうした事情があれば、当初から売り子をする気があったとは考えられない事情にあたり、詐欺の故意があったと認められると思います。
なお、詐欺罪が成立してもしなくても、民事上の責任はありますので、支給した交通費や衣装の返還を求めることはできます」
吉田弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長,千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com