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コブクロ、フレデリック、ミセス、Anly、菊地成孔ガンダムOST…6月15日発売新譜の注目作は?

2016年06月14日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

コブクロ『TIMELESS WORLD』(通常盤)

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。6月15日リリースからは、コブクロ、フレデリック、Mrs. GREEN APPLE、Anly、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』サントラをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


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■コブクロ『TIMELESS WORLD』(AL)


 「未来」(映画『orange-オレンジ-』主題歌)、「何故、旅をするのだろう」(JR西日本『山陽・九州新幹線』CMソング)など15曲中11曲がいわゆるタイアップソング。まるで小田和正か竹内まりやのアルバムのような状態だが、コブクロの楽曲はそれだけ汎用性が高く、どんなシチュエーションにも合う(または合わせられる)ということだろう。ドラマ、映画、CMからマラソン大会まで、与えられたお題に対応しながら正確に芯を食った楽曲を制作し、それを誰もが自然に楽しめるコブクロの歌として成立させるテクニックは言うまでもなく名人級。斬新さや刺激は少ないかもしれないが、いつでもどこでも安心して聴けることこそが売れるポップスの条件とするなら、本作はまちがいなく王道のポップス・アルバムと言える。黒田俊介のルーツであるブラックミュージック、クラブミュージックのテイストを押し出した「Tearless」、小渕健太郎と交流の深い布袋寅泰の作曲による「NO PAIN, NO GAIN feat.布袋寅泰」など、それぞれの音楽性を反映した楽曲も興味深い。


■フレデリック『オンリーワンダー』(SG)


 2014年のメジャーデビューミニアルバム『oddloop』のリードトラック「オドループ」がバンドシーンで話題を集めてから約2年、フレデリックはついに“これが自分たちです”と堂々と表明できる楽曲に辿り着いた。タイトルは「オンリーワンダー」。和テイストと独特のループ感を併せ持ったイントロ、耳に残る韻の踏み方と“誰の模倣もせず、独自のスタイルを貫きたい”というメッセージを緻密に組み合わせたリリック、いままで以上にドラマティックな展開を見せるメロディなど、まさに“オンリーワン”と“ワンダー(驚き)”に満ちたナンバーに仕上がっている。特に強いインパクトを放っているのは、力強さを増した三原健司(V&G)のボーカル。これまでは作詞作曲を手がける双子の弟・三原康司(Ba)のポップ&サイケ&ダンサブルなクリエイターぶりのほうが目立っていた印象もあるが、ここ1年のライブ活動のなかで健司はフロントマンとしての存在感を徐々に強めてきた。「オンリーワンダー」の充実ぶりの大きな要因は、まさにそこにあると思う。


■Mrs. GREEN APPLE『サママ・フェスティバル!』(SG)


 「サママ・フェスティバル!」というタイトルに偽りナシというか、驚くほどあからさまに夏フェスに照準を合わせてきたメジャー2ndシングル。BPM170くらいの身体を揺らしやすいテンポ、エレクトロ×ロック的なカラフルなビート(サビ前は“パン・パパン・フー!”のリズムになります)、シンガロング必至のメロディライン、そして、「サママママ・フェスティバル! ワクワクしちゃうよね」というサビのシチュエーションを限定した歌詞など、岡崎体育の「Explain」をマネして“こういう夏フェスソング、あるよねー”と言いたくなるようなボキャブラリーで埋め尽くされているのだが、たとえばKEYTALKの「MONSTER DANCE」がそうであったように、楽曲として非常に優れているし(特にテンション系コードの使い方と転調、洗練されたポップネスを感じさせるメロディ)、“フェスのオーディエンスにアピールし、自分たちのワンマンに連れてくる”というフェス本来の目的を実現させる可能性を大いに秘めていると思う。どちらにしても勝負は今年の夏。邦楽フェスに遊びに行く人はぜひ、「サママ・フェスティバル!」の効果のほどを確かめてみてほしい。


■Anly『EMERGENCY』(SG)


 沖縄の離島・伊江島出身の19歳のシンガーソングライター、Anlyのメジャー3rdシングル。Superfly、GLIM SPANKYなど、60~70年代のオールドロックをルーツに持つアーティストは自らの音楽的志向とJ-POPとして成立させることのバランスを考えざるを得ないわけだが、ここまでオーセンティックなロックに振り切ったシングルの表題曲は稀ではないだろうか。サウンドの軸になっているのは藤井謙二(The Birthday)のギター。楽曲の背骨となるギターリフ、昨今のJ-POPではあり得ないほど長尺のソロ(2分18秒から約30秒間続く)を含め、本格的なハードロックとしてのテイストを全面に押し出しているのだ。ビンテージ感に溢れたサウンドを背負いながら、ソウルフル&ダイナミックな声を響かせるAnlyのボーカルも、これまで以上に個性を発揮。歌の上手さをアピールするのではなく、楽曲自体のテイストを増幅させるような表現力の高さは、3曲目に収録された「STAIRWAY TO HEAVEN」のアコースティック・カバーからも十分に感じられる。


■オリジナル・サウンドトラック『機動戦士ガンダム サンダーボルト』/菊地成孔(AL)


 メジャーのJ-POPアーティストが当コラムの基準であり、アニメのサントラは枠外なのだが、このアルバムは2016年におけるもっとも重要な作品のひとつだと思うのでぜひ取り上げたいと思う。菊地成孔による『機動戦士ガンダム サンダーボルト』OST。“仇敵同士の主人公のひとりが戦闘中にジャズを聴いている”という設定に合わせ、アルバム前半は完膚なきまでにフリージャズ。エリック・ドルフィー、ジョージ・ラッセルを想起させる楽曲を梅津和時(クラリネット)、坪口昌恭(Key)などの凄腕ジャズミュージシャンが演奏しているのだが、これが緊張感と残虐性に満ちたアニメの戦闘シーンに驚くほどハマっている。菊地プロデュースのアルバム『Tea Times』でカムバックを果たすピアニスト、大西順子が全面的に参加していることにも注目してほしい。


 もうひとりの主人公は往年のアメリカンポップス好きということで、アルバムの後半にはオールディーズ風のナンバーがずらりと並ぶ(そう、本作はフリージャズとオールディーズのハーフ&ハーフなんです)。メディアではほとんど語られていないが、じつは菊地はオールディーズ・マニアであり、市川愛、坂本愛江といったシンガーをフィーチャーした楽曲には、1950年代のアメリカのポップミュージックへの造詣と愛が溢れまくっている。菊地によるオールディーズがまとめて堪能できる作品は、おそらくこれが最初で最後だろう。(森朋之)