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子どもの教育資金づくりに最適? 4月開始の「ジュニアNISA」を徹底解説

2016年06月14日 10:21  弁護士ドットコム

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毎年決まった金額内で、株式や投資信託の配当金や値上がり益を非課税にする「NISA」(少額投資非課税制度)。日本在住の成人なら、年間120万円までの投資枠が非課税になる制度ですが、今年4月からは、0歳から始められる「ジュニアNISA」の運用が始まりました。


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実際に投資するのは祖父母や親世代が想定されますが、贈与税がなど、気をつける点はないのでしょうか。正しい活用方法について、三宅伸税理士に聞きました。



○「ジュニアNISA」覚えておきたいポイント


・年間の投資上限金額:80万円


・18歳までは払い出しが制限される


・金融機関の変更はできない


・元本保証はない



●ポイント1「年間80万円以内なら税金がかからない」


通常、日本では株式等で利益を上げた場合には約20%の税金がかかります。NISAは、投資によって得られた利益に税金がかからない制度で、イギリス のISA(Individual Savings Account)をお手本に、日本でも2014年、成人版が導入されました。日本に住む20歳以上の成人がNISA口座を作ると年間120万円までの投資に対し非課税投資枠が設定できます。投資した年から最長5年間が非課税期間となります。



今年4月に運用が始まった「ジュニアNISA」の利用対象者は、日本に住む0歳から19歳の未成年者です。正式名称を「未成年者少額投資非課税制度」といい、未成年者が所有する株や投資信託の運用益や配当金を一定期間、一定金額非課税にする制度のことです。



ジュニアNISAの目的は、子どもたちのための教育資金を作ることです。父母または祖父母が資金を出す場合が多いと思われますが、口座の名義人も所有者も子どもです。ただ、成人版とは年間の投資限度額や、払い出し制限など運用管理の面で異なる点があります。成人版が120万円であるのに対し、ジュニアNISAの年間投資限度額は80万円。80万円以内の投資に対する利益や配当は課税対象になりません。運用は親権者が代行することになります。



●ポイント2「18歳までは引き出せない」


もう1つの、成人版との大きな違いが、払い出し制限です。運用によって得た利益は対象の子どもが利用することを目的にしているため、注意が必要なのは、子どもが18歳になるまで、口座からお金を引き出すことができない点です。



また成人版NISAと違い、ジュニアNISAは一度口座を開くと金融機関の変更はできません。



以上のように通常のNISAとの大きな違いは、対象年齢、年間投資上限額、運用管理、金融機関変更の可否、払い出し制限等です。



●ポイント3「祖父母からの生前贈与としての活用ができる」


ジュニアNISAの資金である80万円(年間上限額)の資金を父母または祖父母等が用意したのであれば、その資金は子どもへの贈与となり贈与税の対象になります。ただ、贈与額が贈与税の基礎控除額(110万円)以下であれば、贈与税はかかりませんので、NISAの口座への贈与だけであれば、贈与税はかかりません。



そこで、この80万円を生前贈与として相続財産を減らす効果があります。また他の教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置と併せて活用することもできるので、うまく組み合わすことでより大きな相続税対策の効果も期待できます。



●ポイント4「大学入学金として最適」


ジュニアNISAの特徴の一つに、18歳までの払い出し制限(3月31日時点で18歳となる年の1月1日以降まで支払えない)がありますが、高校3年生の1月には運用してきた資金を現金として引き出して良いことになります。



ジュニアNISAには、大学入学のため入学金や授業料を準備するのに役立ててほしいという国の意思が込められているので、大学入学を見据えた制度設計になっています。また20歳になるまで非課税投資残高の保有を継続できます。



非課税期間の終了時、80万円を上限として翌年設定される新たな非課税投資枠に移管するか、課税ジュニアNISA口座で保有することができます。また、ジュニアNISAでの運用は20歳以降に成人NISAへ移行することも可能です。



あくまでジュニアNISAは子どものものなので親名義の口座に移すと、子から親への贈与とみなされる場合がありますので、注意が必要です。



●ポイント5「デメリットとして、元本保証はない」


上記のように、ジュニアNISAはメリットが大きい制度です。ただ、ジュニアNISAは、高利回りが期待できますが、元本保証ではありません。大きな利益が得られる可能性がある反面大きな損失が出る可能性もあります。通常の投資と同様に分散投資するなどリスクヘッジを考える必要があります。



またジュニアNISA口座以外で発生した他の損益(配当金・分配金・譲渡益)との通算はできません。株等の譲渡損失の3年間の繰越控除の対象にもなりません。18歳まで引き出し制限もあります。運用益が出なければNISAの非課税の恩恵を受けることはできません。



ジュニアNISAを使うのに向いている人は、リスクがあっても、資産を増やしたい方や投資先も自分で選びたい方。また、インフレにも備えたいというのであればジュニアNISAを、増えなくても確実にお金を残したいというのであれば、学資保険や一般的な積立預金を選択する方がいいのかもしれません。



【取材協力税理士】


三宅 伸(みやけ・しん)税理士 


大阪府立大学卒業 一般企業を経て税理士法人に勤務。平成26年11月に独立開業。独立当初から会計やコミュニケーションツールとしてクラウドを活用。創業支援、法人成りまた相続に関わる相談も多い。お客様との心の距離も縮まるクラウドで、ストレスのない環境を目指している。


事務所名   :三宅伸税理士事務所


事務所URL:http://miyake-tax.jp


(弁護士ドットコムニュース)