2016年06月14日 10:02 弁護士ドットコム
弘前大(青森県弘前市)は、ゼミの女子学生にセクハラ行為などをしたとして、50代の男性准教授を停職6カ月の懲戒処分にした。処分は6月1日付。ホテルの同室宿泊を強制されるなど、3人の女子学生から申し立てがあった。
【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】
大学によると、この准教授は2014年3月、ゼミの女子学生と2人でアジア地域を調査した際、宗教施設やホテルの同じ部屋で13泊した。大学には「施設に宿泊部屋は1つだけだった。ホテルは同室の方が安く、安全と考えた」と説明しているという。
一方、女子学生は「嫌だったが、先生が不機嫌になると思った」と話しているという。わいせつなどの行為については申し立てがなかった。准教授は、ほかのゼミ生にも同室を申し出て、断られるなどしていた。
わいせつな行為はなく、准教授が主張するような理由で同室しただけだったとしても、セクハラになりうるのだろうか。飯田昭弁護士に聞いた。
セクハラ行為は、性的な性質の言動が対象になりますが、ここに言う「言動」は、性的行動に限らず、言葉や視線、酒席に強く誘うなど、かなり広い意味です。
また、大学におけるセクハラは、「アカハラ」あるいは「キャンハラ(キャンパス・ハラスメント)」の側面をもちます。加害者が教職員で、被害者が学生や院生というケースが典型的です。拒否することで成績上の不利益を受けるのではないか、などと学生側が恐れる状況であれば、ハラスメントになります。
今回のように指導教授が同室を求めることは、真にやむを得ない事情がない限り、セクハラないしアカハラ行為と認定されると思います。実際に何らかの性的な行為があったかどうかは、認定を左右するものではありません。
もっとも、「停職6カ月」は処分の中では重いものですから、処分の妥当性は議論になるかもしれません。性的関係(の求め)が一切ないとすれば重すぎるとも考えられますし、ほかの女子学生にも同室を提案しているなどの事情をふまえ、妥当な判断がなされたとも考えられます。報道内容だけからは何とも言えないところです。
もし比例原則(過去の処分例に比較してどうか、言動との関係で不相当に重い処分ではないか)に違反していれば、大学の処分権限の逸脱・濫用が問題になります。この場合、准教諭は裁判で処分の取消しを求められる可能性があります。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
飯田 昭(いいだ・あきら)弁護士
日常的には府市民や中小零細業者に係わる多様な案件を取り扱っていますが、常に社会的弱者の立場に立つことを心がけています。
ジェネラリティ(generality、市民や中小零細事業者の依頼には幅広く対応できる力)とスペシャリティ(speciality、ライフワークの分野での先進性)の両面をバランスよく追及していきたいと思っています。継続的に取り組んできた問題(ライフワーク)としては、開発・環境・景観・まちづくりをめぐる問題、マンション問題(建築紛争及び管理)、欠陥住宅などの消費者被害問題など。同志社大学法科大学院講師(行政実務の基礎)。著書(共著)に、「歴史都市京都の保全・再生のために」(文理閣)、「科学者のための法律相談」(化学同人)など多数。
事務所名:京都第一法律事務所
事務所URL:http://www.daiichi.gr.jp/