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『とと姉ちゃん』次女役で注目! 相楽樹の包容力あふれる演技の魅力

2016年06月14日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

「とと姉ちゃん」公式サイトより

 現在放送中の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』。高畑充希演じる“とと姉”こと小橋家長女・常子のすぐ下の妹・鞠子役で存在感を増しているのが女優・相楽樹だ。朝ドラは『ゲゲゲの女房』で数シーン出演経験があるが、本作ではメインとして重要な役柄を担う。厳しいオーディションを勝ち抜き役を得た彼女の魅力に迫る。


参考:黒木華、『重版出来!』に見る“芝居の引き出し” いかにしてコミカルな役柄をものにした?


 物語の舞台となる“小橋家”の三姉妹。6月3日の放送から三女・美子が杉咲花にバトンタッチされ、作品終了までのキャストが揃った。これまで数多くの映画やドラマに出演し知名度のあった高畑や杉咲と違い、相楽は放送前には無名に近い存在だった。しかし物語がスタートすると「次女役の子ってなんていう女優さんなの?」という声をよく聞くようになった。


 西田征史氏の脚本の妙ということもあるが、三姉妹のキャラクターが立っており、それぞれの個性が物語にうまくマッチしている。猪突猛進型の長女・常子、甘えん坊で寂しがり屋という末っ子の特徴を強く反映している三女・美子。その間で、漂うように隙間を埋めている、一見無個性のように見えつつも、辛抱強く強い意志を持つ鞠子を好演している。


 物語が進むにつれ鞠子は自身の主張を少しずつ出すようになってくるが、基本的には3姉妹の真ん中の立ち位置で、姉と妹の感情を受ける役柄。ややもすれば、相手を輝かせる存在で終わってしまいそうだが、相楽演じる鞠子は、他の姉妹ほど個性を押し出すことがないにもかかわらず、視聴者に何とも言えない後味を残す。常子が(坂口健太郎演じる)星野とした会話を鞠子に話す場面で「うんうん」と頷いているだけなのに、常子がしゃべる熱量だけではなく、鞠子自身も星野に対して「何か思いがあるのでは?」と思わせるような間を自然と演じている(実際、そういう感情はないようだが……)。
 
 相手の芝居の良さを引き出す受けの演技をしつつ、自身の存在感もしっかりと視聴者に残す——。共演者や起用する側にとっては非常に心強い役者と言えるだろう。高畑も相楽の演技について「包容力があり、こちらが発信することを、さらっと自然に受けてくれる」と評価していた。


 以前、映画で相楽を起用したプロデューサーは、彼女の魅力を「肩に力が入っていないナチュラルな演技」と評した。自然体で芝居を受けることができるため、どんな個性的なキャラクターとも相性がいい。彼女がオーディションを受けに来た役柄は、髪型の関係で起用することができなかったが、他の役で見てみたいと思わせるだけの光るものがあったと映画プロデューサーは語っている。


 相楽が演じる鞠子は、冷静に姉妹のバランスを取りながら行動をしつつも、自身の思いを達成するために強い意志をもち、努力を惜しまない。実際の相楽も“頭で考えるタイプ”と自己分析したが、「朝ドラは知名度に関係なくオーディションで役を得られる」と意欲をみせ、ひたむきにチャレンジし今回の役を得るという強い一面も持つ。そんな役柄との共通点も、視聴者が感情移入しやすいポイントなのかもしれない。


 以前、「まだ、朝ドラに出ているという実感が沸かない」と語っていたが、イベント等で視聴者からの声をダイレクトに聞く機会に触れると「細かいところまでいろいろ見てくれているんだ」と身が引き締まる思いになるという。朝ドラ特有のタイトな撮影に戸惑いつつも、多くのことを吸収している相楽。近年、朝ドラを契機に大きく羽ばたく若手女優は多いが“自然体で役に寄り添える”相楽の需要は、今後さらに増えていくだろう。(磯部正和)