6月11日放送の「NHKスペシャル」で「不寛容社会」をテーマに話し合っていたところ、妖艶な魅力で人気のタレント壇蜜さんの口から「私って変態でしょうか?」と驚きの質問が飛び出しました。
「不寛容」とは心が狭く、他人の言動を受け入れないこと。他人の罪や欠点などを厳しく咎めだてすることを指します。スマホの普及でネットの炎上はこの5年で10倍にもなり、批判を恐れるあまり企業や芸術の表現活動が委縮してしまう。これをどう思うか、という至って真面目なやりとりが交わされている最中でした。(文:篠原みつき)
同質性の高い集団では、異論は「裏切り者」になる
これに答えたのが、脳科学者の中野信子教授です。「青シャツ黄シャツの実験」を例に、人間の考え方の特徴を紹介しました。人を無作為に2つに分け、一方のグループには黄色、もう一方には青のシャツを着せて、自分がそのグループの構成員であることを意識させるような扱いを毎日4週間繰り返します。
すると、相手のグループのことをさげすむようになり、自分のグループのことを過剰に高評価するようになったといいます。つまり「人間はもともと同じ考えの人と一緒になり、強く結ばれていきたいもの」ということ。中野さんは、こう指摘します。
「それが進むと、同質性をどんどん強める方向になり、それを乱す者がそのまま『悪』になる。例えば反対派の中で『こういう意見もある』と言ったら、裏切り者として吊るし上げに遭っていくというのです」
何となく思い当たるフシはありますが、番組ではあるツイッターの分析調査を元に「ネットでは自分と同意見の情報にばかり触れて、それだけが世界であると勘違いし、より考え方が偏っていく」との危険性も示していて、それを裏付ける解説です。
そこで壇蜜さんが控えめに「ちょっとだけ聞いてもいいですか? 中野先生に」と話し始め、冒頭で紹介した質問を切り出しました。
「自分を嫌っている人の話を(ネットで)あえて見てみるんですよ。そうして、ああこんなに嫌われてるって…、なんかちょっと嬉しくなっちゃうのは変態ですか?」
よく発達した「成熟した脳の持ち主」とお墨付き
この質問を聞いて作家の鴻上尚史さんは爆笑。周囲も呆れたように笑っていましたが、壇蜜さんは至って真面目。中野さんが笑いながら「ほんとに壇蜜さんは素晴らしいと思うんですけど…」と言いかけると、さらに「変態ですか!?」と畳み掛けます。
中野さんは「変態と言っていいのかどうか」と前置きし、こう答えました。
「自分と違う意見を受け入れるか、受け入れないかという能力は、前頭全皮質の背外側頭部の厚さで決まります。なので壇蜜さんは、その部分がよく発達した成熟した脳の持ち主なんだということが、今の発言で分かります」
壇蜜さんは納得しなかったのか、なおも「親に聞いたら『一回病院行け』って言われたんですよ」と続けました。最後は少し笑っていたので、自分の役割を承知の上でのサービス発言かもしれません。批判を好んで受け止めるMっぽい性質と聞くのは面白いですから。
こうした発言も、寛容に受け止めて楽しむ余裕を試されているような気がしました。ただ壇蜜さんだけでなく、あるネットメディアのベテラン編集者も「記事に対する批判的なツイートを見るのは嫌いじゃないですね。自分の仕事が社会に触れた感じがしますから」と言っていましたから、一部にそういう人がいるのかもしれません。
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