スーパー耐久シリーズ第3戦鈴鹿/大逆転で今季初優勝を飾った3号車ENDLESS ADVAN GT-R スーパー耐久シリーズ第3戦が6月11~12日に鈴鹿サーキットで行われ、内田優大/藤井誠暢/平峰一貴組の24号車スリーボンド日産自動車大学校GT-Rが、2戦連続でポールポジションを獲得。しかし、決勝では降りしきる雨に足を取られ、開幕3連勝はならず。トップは目まぐるしく入れ替わったが、ラスト6分にまさかの大逆転劇で、YUKE TANIGUCHI/峰尾恭輔/山内英輝組の3号車ENDLESS ADVAN GT-Rが今季初勝利を挙げている。
鈴鹿が舞台の第3戦は、初の試みとして予選と決勝の間に「セカンドチャンス100」を実施。これは簡単に言うと敗者復活戦で、ST-XクラスとST-1クラスは予選で基準タイムをクリアすることを条件に、また他のクラスは予選3番手以上であれば、決勝進出を許される。その一方で、4番手以下のチームは「セカンドチャンス100」を戦った上で、按分比例によってあらかじめクラスごと定められた順位までしか決勝進出を許されないという仕組みだ。
まず予選では、2戦連続でスリーボンド日産自動車大学校GT-Rがポールポジションを獲得。特に藤井は昨年の最終戦で自ら記したコースレコードに1秒を切るほど迫り、気候的な条件を踏まえれば、まさに会心の一発を決めていた。
続いて行われた「セカンドチャンス100」は、文字どおり100分間の戦いに。この間、通常の決勝レースと同じように2回のピットストップが義務づけられる。一度だけ、オイル処理のためSCランが実施されたものの、懸念された大波乱もなく、まずまず順当に有力チームが決勝進出を果たした。
ちなみに、トップでチェッカーを受けたのは、長島正明/田中徹/田中哲也組の15号車岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34。この「セカンドチャンス100」を勝ち抜いた22台を加えた、45台が決勝のスターティンググリッドに並ぶこととなった。
今回の決勝は4時間での戦いで、日没後にチェッカーが振られる一昔前のインターナショナル鈴鹿1000kmを彷彿させるナイトチェッカーが用意された。
「暗くなると、路面が見にくくなるから、最後は若いドライバーに走らせる(笑)」といった、ベテランからの冗談とも本音ともとれる声がいくつか上がったものの、それ以上に悩みの種となったのが天候だった。
いったんはやんでいた雨がまたポツリポツリと来て、しかも雨雲がレーダーで見ると大接近。何台かは、ウエットタイヤを装着してのスタートとなった。
本格的に降り出したのは30分以上経過してからで、それまで待ち切れなかった車両はいったんドライタイヤに戻したことから、勝負権を早々に失うこととなった。
まだドライタイヤのままで走れた頃、ST-Xクラスで圧巻の走りを見せていたのが、スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの平峰だった。好スタートを切ってトップを守ると、後続にペースを合わせる余裕さえ見せていたほど。
だが、雨が強くなってくるとENDLESS ADVAN GT-Rの山内が、平峰のペースを上回るようになり、あと一歩のところで逆転も先にピットに入られてかなわず。ところが、GT-R以上に雨の中での速さをみせたのが、89号車Hub Auto Ferrari 488GT3を駆る坂本祐也だった。2スティント連続での走行で、トップを奪い取ることに成功。コーナリングスピードの高さを自慢とする488GT3ながら、ウエットコンディションでここまで際立たせるとは、いったい誰が思っただろうか?
残念ながらHub Auto Ferrari 488GT3は、坂本の後を受けたモーリス・チェンにピットレーンスイッチの操作ミスがあり、速度超過に対してドライビングスルーペナルティが科せられ後退。
ENDLESS ADVAN GT-Rの峰尾が再びトップに立って、最終スティントを再び山内に託すことに。だが、今度は5号車Mach MAKERS GTNET GT-Rの藤波清斗が迫ってくる。ラスト10周で逆転を果たし、そのままトップでチェッカーを受けるかと思われたMach MAKERS GTNET GT-R。それが98周目のバックストレートでなんとストップ!
「入っているはずのガソリンが入りきっていなかったようです。(星野)一樹の時はいけた周回に(藤波は)届かなかった」と、天を仰ぎつつ語ったのは尾本直史監督。
これでENDLESS ADVAN GT-Rがトップに返り咲き、ディフェンディングチャンピオンたちが今季初優勝を飾ることとなった。
「これまでつらい予選、つらいレースが続いていましたが、ようやくGT-Rのことを僕らドライバーだけでなく、チームも理解できるようになったから、この結果があるんだと思います。この流れを大事にしていきたいですね」と峰尾。
2位は坂本/チェン/吉本大樹組のHub Auto Ferrari 488GT3が獲得し、「今年ようやくレースがちゃんとできました。これも坂本さんがすごくいい走りをしてくれたおかげです」と吉本。
そして、「最後はタイヤ無交換だったのが裏目に出て、全然グリップしなかった」と藤井が語ったスリーボンド日産自動車大学校GT-Rが3位。24号車はランキングトップをキープしている。
完走を果たしたST-Xクラス勢に続いたのは、四駆のST-2クラス勢ではなく、4台が最後まで激しいバトルを繰り広げていた二駆のST-3クラス勢だった。
最初と最後だけは38号車堀田誠/阪口良平組のMUTA Racing TWS IS350が他チームを圧し、6クラス中唯一の開幕3連勝を果たすこととなった。
「良平選手の師事も、今年で10年目。大好きなんだけど、苦手な鈴鹿でどうしても勝ちたかったから、本当に嬉しい。今回はメンタルな面まで指導してもらいました」と堀田。2位は小松一臣/杉林健一/安宅光徳組の14号車岡部自動車KYOSHIN 195Z34が獲得した。
一方、ST-2クラスは冨桝朋広/菊地靖/大橋正澄組の6号車新菱オートDIXCELエボXが2連勝。前回の無念を晴らそうとした、大澤学/後藤比東至/檜井保孝組の59号車DAMD MOTUL ED WRX STIにトラブルが相次ぐ中、難なく逃げ切りを果たしていた。
「前の勝利から4年も経っていたのに、年に二回も勝つなんて、もう運を全部使い果たしたかも」と冨桝は苦笑する。そして、一台のみ出場のST-1クラスでは、星野敏/荒聖治組の777号車D’station Porsche 991が開幕戦以来の完走を果たすことに成功。
ST-4クラスは早々に、松井孝允/井口卓人/蒲生尚弥組の86号車TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86、そして松井猛敏/中島保典/柴田優作組の95号車SPOONリジカラS2000の一騎討ちとなっていた。
序盤に1周だけだがSCランがあり、その時にこの二台だけが総合トップのバックマーカーとなっていなかったため、3番手以下にほぼ1周の差をつけてしまったからだ。
しかし、ドライバー交代のタイミングによってSPOONリジカラS2000に一時トップを明け渡したことはあったが、終始有利に展開を進めていたTOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86が今季初優勝。3位は連勝こそならなかったものの、ポイントリーダーの村田信博/小河諒/元嶋佑弥組の13号車ENDLESS ADVAN 86が獲得した。
そしてST-5クラスは、2013年の第4戦富士スピードウェイにおいて、マツダのガソリンエンジン搭載車両として初めて国内耐久レースを制したTEAM NOPROが、今度はディーゼルターボエンジン搭載車両でも初優勝を飾った。
同じフィット3勢とバトルを繰り広げつつ、今回のST-5クラスでは他を圧する速さを見せ、なおかつレースの大半をリードしたのは、大野尊久/窪田俊浩/梅本淳一組の69号車BRP★J’S RACINGホンダカーズ浜松北みきゃんFIT。
しかしながら、「僕らが4時間のレースで3回も給油しなくてはならない中、1回で済まされては……」と梅本。
谷川達也/井尻薫/野上達也組のDXLアラゴスタ・NOPROデミオSKY-Dは好燃費を武器として、ピットでのロスを最小限にし、かつフィット3とは離れて周回を重ね続けたことで、気がつけばトップに浮上。終盤には梅本が5秒差にまで迫ったものの、谷川のプッシュによって逃げ切りを果たす。「また新しい記録を築けて最高の気分です! 谷川さんと井尻さんには、本当に感謝しています」と野上は語った。