2004年以来、キャデラックにとってアメリカにおける最大のレース活動の場となっているのがSCCA(スポーツ・カー・クラブ・オブ・アメリカ)が主宰する『ワールドチャレンジ』だ。このシリーズで、キャデラックはすでに大きな成功を手にしている。
04~07年にかけての3年間で、当時のCTS-Vが10勝を記録したほか、ポールポジション7回、優勝を含む表彰台フィニッシュを36回達成し、また、05年にはマニファクチャラーズ選手権を制覇すると同時に、アンディ・ピルグリムがドライバーズタイトルを手にしている。
07~11年にかけて同シリーズから手を引いていたキャデラックだったが、11年には新型『CTS-V』とともに復帰。そして復帰2年目には再びダブルタイトルを達成した(ドライバーズタイトルはジョニー・オコネルが獲得)。
その成功を引き継いだのが、現在同シリーズに参戦する最新モデル『キャデラックATS-V.R. GT3』だ。2015年から参戦を開始したこのモデルは、エンジンに市販のATS-Vセダンから流用したLF4.R型の3.6リッターV6を搭載。キャデラックによれば、このボルグワーナー製の大型タービンコンプレッサーを2基備えたエンジンは、パフォーマンス制限がない場合、7400回転で600馬力超を発揮するという。その他、大容量のインタークーラーや、サイドエキゾーストを採用。ミッションはXトラック製6速フラットシフトを搭載する。前後の重量配分は理想に近い51対49となっている。
ブレンボ製のブレーキは市販車のものに近いが、レース時にはフロントに355mmのブレーキディスクと6ポットのキャリパーを、またリヤにはやや小径の328mmのディスクと4ポットのキャリパーを使用している。
マシンは空力面でも充分な開発が施され、実際の製造の前に完全なCFDデータを作成し、確認作業を行なっている。ATS-Vのくさび形の形状は高速走行に適しており、リヤにボトムマウントされたウイングとディフューザーが更なるダウンフォースを稼いでいる。
このマシンは当然のごとく、FIA GT3規定に準拠して製作されているが、まだ本格的にカスタマーへのデリバリーは行われていない。ライバルとのパワーバランスにおいてこれは興味深い要素と言えるが、いつか日本を含めた主要な選手権で走ることを期待せずにはいられないマシンであることはたしかだ。