2017年から導入されるF1のコックピット保護デバイスとして、FIAがハロを選択したのは、エアロスクリーンがいくつかのテストに合格できなかったためであることが、英AUTOSPORTの取材でわかった。
ハロの採用は、先月のテクニカルレギュレーション作業部会の会合で承認された。だが、その時点では、時間的な制約を考えると、レッドブルの代替案であるエアロスクリーンのコンセプトは開発が間に合わないというのが、不採用の理由とされていた。
しかし、この会合の前日、FIAはこのエアロスクリーンについて、独自のテストを行っていたという。
レッドブルは、すでにエアロスクリーンに向けてホイールを投射する、静的なテストのビデオを公開していた。だが、FIAが行った同様のテストでは、不合格との評価を受けたようだ。
消息筋によると、「エアロスクリーンに対する最近のテストでは期待された結果が出ず」、「さらなる開発が必要である」ことが明らかになったという。
指摘された問題点のひとつは、ドライバーのヘルメットとエアロスクリーンのリムの間の「フリーエアボリューム」に関する懸念だった。つまり、エアロスクリーンを装着したクルマがクラッシュしたり、アクシデントに巻き込まれたりしたときに、ドライバーのヘルメットがスクリーンの縁の部分に当たって、頭部にかなり大きなGが発生する可能性があることがわかったのだ。また、現時点でのデバイスの全体的な強度も、もうひとつの懸念材料となったようだ。
これに対して、ハロにはそうした問題はないと考えられおり、前出の消息筋は、ハロが「2017年に現実的に導入可能な唯一のソリューション」だと述べている。
とはいえ、エアロスクリーンのコンセプトにはハロよりも保護能力が高い面もあり、2018年に向けての再検討と、採用の可能性が閉ざされたわけではない。実際、ホイールよりも小さな物体がクルマに向かって飛んで来た場合には、ハロのフープとコックピットの間の大きな隙間を通過するおそれがあるのは確かで、それがこのデバイスの「アキレス腱」であることに変わりはない。
だが、FIAとしては、完全ではないにせよ少なくともある程度のドライバー保護には役立つとして、来季からのハロの導入を推進する考えだ。
最終的なハロのデザインは、プレシーズンテストでフェラーリが試した「暫定版」よりも洗練されたものになり、チタン材で製作されるという。また、グリッド上の全車に同じものを使用させるため、製作は入札によって決められた第三者が行うことになりそうだ。
関係者の中には、まだこのデバイスの導入は時期尚早であり、実施を2018年に先送りして、理想に近いソリューションを探すべきだと考える人も少なくない。その場合、レッドブルのエアロスクリーンは、また別のライバルに直面する可能性もある。まだごく初期段階ではあるものの、アメリカのインディカーでも同様のデバイスの検討が始まっているのだ。
いっぽう、レッドブルがエアロスクリーンに必要とされる今後の開発を続けるかどうかには、コストの問題も絡んでくるだろう。彼らはすでにこのデバイスにかなりのリソースを注ぎ込んできたが、2017年からの大幅なレギュレーション変更に備える必要もあるからだ。