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星野源、銀杏、フォーリミ、水カンらが『VIVA LA ROCK 2016』で繋いだ“音楽のバトン”

2016年06月11日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

星野源(C)VIVA LA ROCK 2016 All Rights Reserved

 『VIVA LA ROCK 2016』が、5月28日、29日にさいたまスーパーアリーナにて開催された。


(関連:VIVA LA ROCKプロデューサー鹿野 淳が語る、フェス2年目の挑戦「フリーエリアをなぜ増強したか」


 「埼玉最大の春のメガフェス」と題して、2014年より毎年開催されている株式会社『FACT』、『DISK GARAGE』主催の『VIVA LA ROCK』。今年は、ゴールデンウィークでの3日間開催ではなく、月末の2日間開催となったわけだが、今回2日間『VIVA LA ROCK』に足を運んで感じたのは“アーティストとフェスの親密度”であった。当記事では、よりフェスとの距離の近さを感じることのできたアーティストのパフォーマンスをレポートする。


 当日券を含めソールドアウトした初日には、ヘッドライナーを務めるサカナクションをはじめ、東京スカパラダイスオーケストラ、ぼくのりりっくのぼうよみ、など幅広いジャンルのアーティストが揃った。なかでもSTAR STAGEで行われた「VIVA LA J-ROCK ANETHEMS」には、アーティスト参加型の強い企画性が感じられた。これは、この日のステージのためだけにミュージシャンたちがコラボレーションし、日本のロックの名曲をカバーするスペシャルコーナーだ。今年は、バンドマスターを務める亀田誠治(Ba.)を筆頭に、津野米咲(赤い公園/Gt.)、ピエール中野(凛として時雨/Dr.)、伊澤一葉(the HIATUS/Key.)、加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ/Gt.)といった豪華布陣がメンバーとして集結。ゲストボーカリストとして一番手に登場した田邊駿一(BLUE ENCOUNT)は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「リライト」を歌唱し、オーディエンスの期待に応えていく。アリーナ後方から透明の球体に包まれ登場したコムアイ(水曜日のカンパネラ)は、くるりの「ワンダーフォーゲル」を優しく歌い上げ、尾崎世界観(クリープハイプ)は尾崎豊の「I LOVE YOU」を特徴的なハイトーンを持ち味に綺麗なファルセットで歌唱した。斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)は、「この曲を初めて聴く人がいたら、ちゃんと伝わるように歌います」と前置きし、フジファブリックの「若者のすべて」、「一生で一度しか歌わない曲です!」と宣言したスガ シカオは宇多田ヒカルの「traveling」をパフォーマンスした。大役のトリを務めるTAKUMA(10-FEET)が歌うのは、THE BLUE HEARTS「リンダリンダ」。ラストにはゲストボーカリスト全員がステージに集結し、大盛り上がりの中終了した。


 「VIVA LA J-ROCK ANETHEMS」にも登場した水曜日のカンパネラは、この日のCAVE STAGEに登場。筆者にとって、初日ベストアクトとなったアーティストなので、ここで特筆しておきたい。『VIVA LA ROCK』初登場にして、フロアは入場規制がかかるほどファンの熱気で溢れていた。フロアの後方から現れたコムアイは、脚立に乗ったままスタッフに担がれ前方のステージへ。登場曲となった「メデューサ」に続き、「ディアブロ」「桃太郎」と代表曲を歌唱していく。ファンに喋りかけるといった純粋無垢な一面を見せるコムアイは、歌唱中でも時折オーディエンスにマイクを向ける。すると、たちまちフロアには大合唱が起きる。なんともファンに愛されているのが伝わって来るステージなのだ。ラストの「ドラキュラ」でもファンのシンガロングに包まれながらコムアイはステージ後方に去っていった。


 初日に続き快晴のもと開催された2日目にはDragon Ash、SiM、MONOEYESなど多くのロックバンドが集結。自然光が降り注ぐVIVA! STAGEのトップバッターを務めたのは04 Limited Sazabysだ。昨年に引き続き、同じステージでの1番手ということにGENは、「あの頃の気持ちを思い出して」と述べ、ショートチューン「Remember」をプレイ。そのまま「monolith」「fiction」「Chicken race」と畳み掛け、集まった会場のファンを踊らせていく。「このフェスは雰囲気が好きです。(フェスのプロデューサー)鹿野(淳)さんの思い入れも見えます。自分でフェス(『YON FES 2016』)もやるようになったので、この規模でやる大変さもよく分かります。ずっと続いて欲しいです」とGENがコメントし、続けて「STAR STAGEにも立ちたい。もっと高みを目指せるように、新曲やってもいいですか?」と述べ「climb」を披露。ラストは「『VIVA LA ROCK!』の未来に光が射しますように!」とフェスにエールを贈り、代表曲の「swim」で幕を閉じた。


 2日目の出演者の中で特に印象的なステージを披露したのが、同じVIVA! STAGEの2016年トリを飾った銀杏BOYZ。アコースティックギターを持ち、ステージに1人で現れた峯田和伸は15分以上ある楽曲「生きたい」を鬼気迫る表情で熱唱した。昨年、野外に特設されたTSUBASA STAGEに登場した峯田は「昨日、出来た新曲を」と話し「生きたい」を初披露していた。あれから1年、現在は途中からサポートメンバーがステージに登場し、耳をつんざくようなギターノイズをスイッチに、峯田はハンドマイクを片手に縦横無尽にステージの上を暴れまわる。次曲では、GOING STEADY「DON'T TRUST OVER THIRTY」にある<いつの日にか僕らが心から 笑えるように>の歌詞を残し、大胆にアレンジした新曲をパフォーマンスする一幕も。「1997年の寂しいアパートで出来たこの曲は、俺が死んでも化石になって生き続けるんじゃないかなって思ってんの」と峯田が話し、演奏したのは「BABY BABY」。会場には大合唱が起こる。ラストは「東京」と安藤裕子に提供した「骨」を優しく歌い上げた。


 2日間続いた『VIVA LA ROCK』もいよいよラスト。2年ぶりの出演にして大トリを務めるのは、今や紅白出演アーティストとなった星野源だ。STAR STAGEにギッシリ詰まったファンに向け、「地獄でなぜ悪い」「化物」といったアップナンバーで会場のテンションを上げていく。「埼玉は私の故郷なんでね。ただいま」と爽やかに言い放ち黄色い歓声を浴びた星野は、グルーヴの効いた「桜の森」で会場を横に揺らし、弾き語りでの「くだらないの中に」ではアコースティックギターの音色で会場を優しく包み込む。「夢の外へ」「Crazy Crazy」「SUN」とシングル曲を立て続けに披露し、それぞれのステップでファンが踊るダンスフロアと化した会場に笑みを浮かべた星野は、「時よ」でライブ本編の幕を閉じた。アンコールを受け星野は、アルバム『YELLOW DANCER』のラストに収録されている「Friend Ship」をパフォーマンス。アウトロでは、星野が激しいギタープレイを会場に見せつけ、拍手に包まれながら2日間の大団円を迎えた。


 全アクトが終了したステージにはフェスのプロデューサーである鹿野 淳氏が登場。「2年前に源ちゃんと焼肉屋で『ヘッドライナーとは何なのか』という話をしました。今日一番後ろで観てたんですけど、ビジョンに映る星野源がヘッドライナーというものを体現してくれていました。いろんなステージで音楽のバトンを20時間以上繋いでくれた、多くの音楽家の方たちに拍手をください」と述べると、会場には拍手が巻き起こった。


 2日目、野外にあるGARDEN STAGEには、埼玉県在住の中学・高校生音楽選手権「GET UP SAITAMA!」のグランプリバンド、アルデヒトが出演していた。会場に集まった多くのファンに対してたくみ(Vo.)は「今、夢を見てるような感覚なんですよ。すごい景色です」とコメントしていたのだが、筆者の視界に入ったのはその言葉を嬉しそうに聞く鹿野氏だった。


 今回レポートしたアーティスト以外にも、サカナクションやBIGMAMAなどフェスへの感謝を伝えていたアーティストは数多くいた。さらに、音楽雑誌『MUSICA』によるアーティストとのトークショーや、アーティストサイン会、アリーナ内で販売していた「アーティストインスパイア飯」などからもフェスとアーティストとの親密度が伺えた。来年は5月3日、4日、5日とゴールデンウィークでの開催に戻り、6日にはスガ シカオとの『スガフェス』としてコラボレートも行われる。来年はどんなアーティストたちとともに“音楽のバトン”が繋がれるのだろうか。(渡辺彰浩)