近年のF1では「モナコ専用」のハイダウンフォース空力パーツは作らない傾向にあるものの、モンキーシート・ウイングレットについては多くのチームが最もアグレッシブな仕様を持ち込んできた。
このパーツは、リヤウイング下で車体中心線から幅100mmのボディワークのフリーゾーンに収まっている。そのため、技術用語としては「Y100ウイングレット」(フリーゾーンの寸法をCAD用語で表わすと「Y100」)という名称が与えられているが、名前としては「モンキーシート」のほうが通りがいいだろう。
モンキーシートのおもな働きは、ダウンフォースを生み出すことだと考えている人が多い。しかし実は、この部分の気流を上に向けて、ディフューザーから出てきた空気をリヤウイング上面からの気流に、うまく合流させることにある。モンキーシートの下にあるエキゾーストから吹き出す排気も、少なくとも部分的には、この働きの手助けをしているが、かつてのブローディフューザーほど強力な効果ではない。
リヤウイング下面の気流を上に向けるのは、リヤウイング最上部の裏面まで、できるだけ気流を剥離しにくくして、より安定したダウンフォースを発生させるためだ。
このような働きの代償として、ドラッグは多少なりとも増加する。したがって、モンキーシートが使われるのは、ドラッグが増えても大きなダウンフォースが欲しいコースか、深く回り込んだコーナーが多く、リヤウイングのダウンフォースの安定性が重要なコースということになる。
モンキーシートは、デザインのトレンドが収束しつつあり、最近では背の高い2枚の翼型エレメントの左右にエンドプレートを取りつけ、アーチ型の片持ち梁で吊り下げる形が最も多い。
トレンドから外れているのは、トロロッソだ。3枚のエレメントで構成され、さらに翼型部分とエンドプレートの両方に複雑なスロットが加えられている。
メルセデスはマウント方法が他とは異なり、下方へ長く伸ばしたエンドプレートでギヤボックスに固定している。
フェラーリはシンプルな2枚エレメントのウイングレット、ザウバーはシングルエレメントを採用。ウイリアムズとレッドブルは、モナコではモンキーシートを使わないセットアップを選んでいた。