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労働生産性が34か国中21位の日本と2位のノルウェー その違いは労働時間ではなく「働き方」にあり

2016年06月09日 19:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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日本の労働生産性が低いことはよく知られている。日本生産性本部の「日本の生産性の動向2015年版」によれば、その順位はOECD加盟国34か国中21位だ。生産性の高い国と何が違うのだろうか。

6月8日、ワークスアプリケーションズが赤坂溜池タワー(東京・港区)で「日本・ノルウェーの働き方に関するメディアセミナー」を開催した。前述の調査で労働生産性が2位のノルウェーのオフィスワーカーと、日本のオフィスワーカーを比較した「『働き方』に関する意識調査」の結果を発表した。

平均労働時間に大差はないがノルウェーではフレックス制度が主流

調査は、20歳~60歳未満の男女436人(日本316人、ノルウェー120人)に対してインターネット上で実施。その結果、所属企業の労働生産性を「高い」「やや高い」と感じる人は日本では23.4%にとどまったのに対し、ノルウェーでは93.3%に達した。

なぜ、ノルウェーの人は労働生産性が高いと感じているのだろうか。労働時間を見てみると、1日の平均労働時間は日本が9.26時間のところ、ノルウェーは9.02時間とそこまで大差はない。また、休日出勤の頻度については、日本は「ほぼなし」が75.6%、だったのに対し、ノルウェーでは47.5%。休日出勤の平均日数を見てみると日本の平均が0.54日だったのに対し、ノルウェーでは1.48日とノルウェーの方が多いことが分かった。

生産性の高さの違いには、両国の「働き方」の違いがあるようだ。始業・終業時刻が決まっている企業は、日本では65.5%だったが、ノルウェーは17.5%。多くの企業が「フレックス」や、より自由度の高い「フルフレックス」制度を取り入れ、従業員の自己裁量で労働時間を決められるようになっている。また、働く場所を問わないリモートワークも、日本の企業ではまだ20.9%しか認められていないが、ノルウェーでは77.5%の企業で認められている。

「フレックスは場所の自由だけでなく、ライフスタイルの自由にもなる」

調査結果の発表後に行われたパネルディスカッションでは、この点について在日ノルウェー商工会議所専務理事のミカール・ルイス・ベルグ氏が理由を説明した。

ノルウェーでは仕事を早めに終わらせて家族と過ごす時間を長くすることが最優先のため、フルフレックスや通勤時間の発生しないリモートワークも非常に普及している。また、上司に相談してその人のライフスタイルに応じたフレックス制度を用いることも出来るという。

「子育て中の人は朝8時に仕事を始め、昼休憩を30分にして、16時に帰る。家事や育児が終わった21時、22時頃にiPad、パソコンでメールのやり取りをするという働き方も出来ます」

調査では日本より休日出勤の割合が高いという結果が出たが、休日出勤と言っても、ノルウェーの場合は職場に出勤する必要がない。金曜日に早上がりした分、家のパソコンで少しメールの確認をしたり、書類の作成をする、というケースも当てはまる。つまり臨機応変に効率良く働けているのだ。ベルグ氏は、

「フレックスは場所の自由だけでなく、ライフスタイルの自由にもなります」

と制度の利点を語った。実際、日本でも柔軟な働き方を取り入れている企業では、従業員の生産性があがっているようだ。昨年よりリモートワークを推進しているリクルートホールディングス働き方変革推進室室長の林宏昌氏は、

「従業員の9割が満足度が高まったと、半数以上が生産性が高まったと答えています。また、集中して仕事が出来るという声もあがっています」

とその効果を語った。

リクルートの今後の課題は「情報共有の在り方」

だが、日本でフルフレックス制度やリモートワークを導入する場合、壁も存在するようだ。ワークスアプリケーションズCEOの牧野正幸氏は、会社でフルフレックス制度を導入し、自由勤務にしていた。しかし、行政機関から労働時間を管理監督するように干渉が入ったという。

牧野氏は、長時間労働を是正するために国が規制するのは正しいが、現在の労働法制では、短時間で効率良く働いた人よりも長時間だらだらと働いた人の方が賃金が高くなっているという現状を指摘。

「このあたりが変わっていかないと、長時間労働をしている人間の中で働き方改革が進まない」

と考えを語った。また、リクルートではリモートワークを推進する上で現在課題として取り組んでいるのが、情報共有の方法だ。林氏は

「対面でない分、上長が部下の仕事の進捗状況等が気になったときにいつでも確認出来るようにしておかないとマネジメントに不安が生じてしまいます。いかに普段からパワーをかけずに情報共有していくのかが次の課題。ITを活用して情報共有の在り方を変えたい」

と話していた。

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