政府が6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、最低賃金を年間3%ずつ引き上げ、全国平均1000円を目指すと指針が公表されている。しかし、最近では最低賃金1500円を目指す運動が各地で盛んになっている。時給1500円ないとまともな生活を送れないというのが彼らの主張だ。
実際、最低賃金が1000円では厳しい状況のようだ。6月3日に北海道労働組合総連合(道労連)が発表した「北海道最低生計費試算調査結果」によれば、札幌市で25歳の若者が「健康で文化的な最低限度の生活」を送るには月収(税込)で男性は22万5002円、女性は22万249円が必要だという。これを最低賃金審議会で用いる月の所定内労働時間173.8時間で割ると、男性で時給1295円、女性で1267円ないといけないのだ。
女性の場合、1着3310円のワンピース2着を4年間着まわす
調査では、全労連に加盟する10~30代の単身者201人の回答から生活の実態を分析。モデルケースを想定した。月収約22万円というと余裕があるのではと考える人もいるかもしれないが、試算を見るとそうでもない。
まず、住居は札幌市白石区の25平方メートルの1DKのアパートで、家賃は最低価格帯で3万4000円(共益費込)。車は持たず、地下鉄を利用して通勤する。食費は月に2~3回の飲み会やランチを含め、男性で約4万円、女性で約3万2000円。家電製品は量販店で最低価格帯のものを揃える。
衣類は「人前に出て恥をかかないでいられるため」に必要なもので、例えば男性の場合は1着1万5800円の背広を2着購入した場合、それを4年間買い足さずに着用する。女性の場合は1着3310円のワンピース2着を4年間着用する計算だ。その他の衣服も基本的には購入後2~4年間着用することが想定されている。
休日の過ごし方は「自宅での休養」がメイン。月に1度、5000円程度の日帰り旅行に出掛けられるが、恋人や友人と映画やショッピングをするために掛けられる予算は月8000円。帰省を含め年3~4回の日帰り旅行をする余裕はあるものの、一回にかけられるお金は3万~4万円。平均が5万5000円のため、少し心許ない。
他に小遣い(喫茶店でのコーヒーなど)に使えるお金は月に6000円。これだけ切り詰めても手元に残るのは男性で1万6300円、女性で1万5900円だ。もし、車を持っていたり、奨学金の返済があるとしたら、月収約22万円でも赤字を余儀なくされてしまう。貯金もままならない。
「東京だとプラス5万ぐらい必要になりそうで辛い」
札幌市内で上記の最低限の生活を送るのに男性だと時給1295円は必要なわけだが、北海道の現在の最低賃金は764円。500円以上の隔たりがある。道労連は「現行の最低賃金額はあまりにも低すぎる」と指摘し、政府の目指す最低賃金1000円が達成されたとしても「きちんとした生活が送れるレベルには程遠い」と述べている。
同調査の結果の概要は、6月4日付けの北海道新聞にも掲載された。この結果を知った人からは、
「やっぱそのくらいは要るよね…」
「これでも買い物は選り好みできず最安値の一択が前提だから、それが『人間らしい』かどうかも怪しいところ」
「この試算に合わせて最低賃金を見直して欲しいが」
といった感想が寄せられていた。また、この試算が札幌市内のものであるため、「北海道でこれなので、東京だとプラス5万ぐらい必要になりそうで辛い」という声も。確かに、都内だと家賃の負担はさらに高くなりそうだ。ちなみに同調査が参データを掲載している、2008年に行われた首都圏(さいたま市)の最低生計費調査結果では、23万3801円が必要となっている。
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