ブルーに彩られたラダーフレームシャシーに、モノトーンの威圧感を漂わせるカラーリング。ロシアの伝説的トラックマニュファクチャラーの『カマズ』は、来季のダカールラリー制覇に向けたニューマシンを、国際ラリーの舞台で初テストすると発表した。
ダカールラリーで13回のクラス優勝を誇るカミオン部門の雄は、これまでのキャブオーバー型トラックヘッドとは一線を画すデザインとレイアウトを持つ新型マシンをスタンバイしていた。カマズ・マスターチームがベースに選んだのは最新の『4326』と呼ばれるシャシーで、特徴的なボンネットとロングキャブボディを備える。利点はシャシー設計の優位性にある、と同チームのダカール覇者、エドゥアルド・ニコラエフは説明する。
「我々はこのマシンをすでに1年前の段階で完成させていたが、まだダカールラリーに向けては充分な準備ができていなかったと判断して、リスクを取らぬよう投入を見送った。まず見た目からして誰もがその違いに気づくと思うが、これまでのマシンにはフード(ボンネット)がないのが普通だった。新型マシンはそれだけで、乗員の快適性を大きく向上させることができ、そしてそれはマシンを速く走らせるのに重要なのだ」
年々、その競技速度の高速化が指摘されているダカールだが、それはカミオン部門にも例外ではなく、そのためスピードに特化したマシン開発が必要とされたのだという。さらにシャシー側のサスペンション設定や剛性確保、ハンドリングにも、キャブフォワード型のトラックよりメリットがある、とチームリーダーのウラジミール・カキンは言う。
「私たちのチームは、常にこの魅力的なスポーツの絶え間なく変化する要件を満たす最高の、最も信頼性が高く、競争力のあるトラックを作り出すよう努めてきた。こうしたロングキャブ型のトラックは衝撃吸収性に優れ、バンプや何かを踏んだ時にその衝撃をうまくシャシーやエンジンブロックに逃がすことができる」
「従来型はアクスルの上に乗員が来るので、直接的に衝撃を受ける形だったのだ。ドライバーはほとんど“大きなSUVをドライブしているような感覚”でプッシュできると言っている。我々はすべての要素を革新したいと思っているし、ステルスレッドブルのカラーリングは、技術の最先端をプッシュしているという視覚的なデモンストレーションにもなるだろう」
この12.5リッター、980馬力の最新ディーゼルエンジンを搭載するカマズ・マスター“カポトニク”と呼ばれるマシンは、16速のZF製トランスミッションを介して、あらゆるサーフェスで160km/h超のアベレージを実現することを狙っている。
まずは本戦の前に、7月8-24日にモスクワからカズフスタンを経由し北京を目指す10000km超えのレイドイベント『シルク・ウェイ・ラリー』で、実戦デビューを果たすことになる。