モナコはユニークなサーキットだが、F1チームにとって、もはや特別なハイダウンフォースが要求される場所ではなくなっている。
モナコでは平均速度がきわめて低いため、一般的なコースと比べると、それほどドラッグの増加に対して気をつかう必要はない。だが、近年どのチームも大部分のサーキットをハイダウンフォース仕様で走るようになっており、昔のように極端なモナコ専用エアロパッケージを作らなくなっているのだ。
とはいえ「モナコ仕様」の基本は変わらない。すなわち最大限のダウンフォース、やや高めの車高、そしてステアリングの切れ角を増すためのボディワークの加工だ。
ブレーキの温度も高めになる。おもな理由は激しいブレーキングによるディスクの温度上昇ではなく、キャリパーとブレーキ液に熱がたまりやすいことにある。
そして、リヤタイヤの温度を上げないように、リヤブレーキの熱は極力ホイールに伝わらないようにしたい。うまくトラクションをかけることが重要なモナコでは、それでなくてもリヤタイヤの温度が上がりやすいからだ。反対にフロントタイヤは温度が上がりにくいため、ブレーキの熱をホイールを通じてタイヤに伝えてやるのが望ましい。
そんな「モナコのセオリー」を踏まえた上で、レッドブルのアップデートを見てみよう。スペインGPでの勝利以降、レッドブルの調子は上向き、開発も活発に進んでいる。モナコに登場したRB12で注目を集めたのは、アップグレードされたルノー製パワーユニット(ダニエル・リカルドが使用)とリヤウイングの新型エンドプレートだ。
スペインGP後のテストで、待ち望まれていたICE(内燃機関)のアップグレードを試したルノーは十分な走り込みができたことに自信を得て、モナコから最新型をルノーとレッドブルの各チーム1台ずつ供給することを決めた。
燃焼技術のアップグレードの具体的な内容については、ほとんど何も明かされていないが、すでにフェラーリとメルセデスが採用しているリーンバーン(希薄混合気による燃焼)に関連する領域と改善したと見られている。きわめて薄い混合気を燃やしながら、最大限のパフォーマンス獲得を狙うものだ。
フェラーリはマーレ社が開発したプレチャンバー方式を採用したと言われているが、メルセデスとルノーが同じとは限らない。F1に適用しうるリーンバーン・ソリューションは他にもいくつかあるからだ。
シャシー面では、新しいリヤウイングのエンドプレートが目についた。スペインにも持ち込まれながら実際には使われなかったもので、モナコが実戦デビュー。このエンドプレートは基本的に最近のトレンドに従いながら、上部に後ろ上がりのストレーキが3本追加され、下端のスリットを構成するベーンが3枚から11枚へと増えている。いずれもリヤウイングまわりの気流の向きを変えて上へ流し、ウイングの効率を上げることを狙いとしたものだ。
レッドブルはモナコで勝者にふさわしい速さを見せたものの、リカルドはピットストップのミスで2位。バルセロナを制したマックス・フェルスタッペンはクラッシュに終わった。一転して、ダウンフォースの軽い仕様となるカナダでは、どんな走りを見せるだろうか。