世の中は急速に変化している。今の子どもたちが社会に出る頃には、今は存在しない職業があるかもしれないし、憧れの職業といわれてきた仕事が衰退している可能性もある。また、グローバル化が進み、日本国外に出て活躍することをより求められることになるかもしれない。
そんな時代に子育てをする親たちは、子どもにどのような力をつける教育をしたらいいのだろうか。
■グローバル時代を生き抜く力とは?『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(中曽根陽子著、晶文社刊)は教育ジャーナリストの著者が、社会・教育の現状やグローバル時代に必要な力、親の役割をわかりやすく解説する一冊だ。
特に本書で目を引くのが、巻末に載っている、著者の中曽根氏と開成中学高等学校校長であり東京大学名誉教授の柳沢幸雄氏の対談「グローバル時代を生き抜くために必要な力とは?」だ。
今の中高生が社会人になるときに、どういう力が必要なのか。平成26年度に内閣府が出した『子ども・若者白書』に、ヒントがあるという。
■語学ではなく自己肯定感を高める教育をそれは、自己肯定感や自信を持つ日本の若者の割合が非常に低いことが、比較対照した7カ国の中で顕著だということだ。
自己肯定感や自信のない子どもたちが世の中に出るときは、自信満々の世界の若者に対峙していかなければならない。そのとき、一番重要な力は英語ではなく、どれだけ自己肯定感を持っているかであると柳沢氏はいう。
語学はあくまで道具であり、自己肯定感がなくて、自分の表現に自信がなければ外国人に思いを伝えることはできないのだ。
■親は昔を思い出しながら子育てをまた、子育てのアドバイスとして親がつい忘れてしまいがちなことを柳沢氏は指摘している。
親の意識は、子どもが生まれたときから親であることだ。親の目線で見ていくと、自分の子どもの頃にどういう意思決定をして、どう成長をしてきたかが抜け落ち、親の立場からしか考えられなくなる。
だから、柳沢氏は保護者に「子どもと同じ年齢のときの自分を思い出しながらしゃべったら間違いないですよ」と言っているそうだ。
当時のアルバムや日記を見て「このときはこんなことを考えていたのか」と思うと、子どもたちの気持ちや行動がよくわかるのだという。
■海外でも通用するための教育をするいくら語学力が長けていて学業も優秀だとしても、自己肯定感や自信がなければ、自分の意見がいえる国際人にはなれない。欧米はどれだけ自分の意見をちゃんと述べられるかで評価されていく文化だ。
子どもの頃から語学力を身につけることももちろん大切だが、自己肯定感や自信を育むような内面の成長を促す教育が大事なのだろう。
(新刊JP編集部)