F1モナコGPで同士討ちを演じた、ザウバーのフェリペ・ナッセとマーカス・エリクソン。実は、ふたりの間にはスペインGPから火種がくすぶっていた。メルセデスが全滅したクラッシュとマックス・フェルスタッペンの初優勝で目立たなかったものの、スペインGPでザウバー2台は接触寸前の事件を起こしていたのだ。
スペインGP決勝の44周目。3ストップ作戦のエリクソンが、2ストップで粘走していたナッセをオーバーテイクしようとしたところ、1コーナーのブレーキングでナッセがエリクソンをブロック。エリクソンがラインを変えてコースオフしたため追突は回避されたが、一瞬ヒヤッとする場面だった。その後、エリクソンは50周目にナッセをオーバーテイクしたが、そのときもナッセに幅寄せされたため、無線で怒りをぶちまけていた。
「あれはないだろう! 危ないよ。ったく、チームメイトだろう。頼むよ!!」
モナコGPの水曜日に行われた会見で「スペインGP後にチームメイトと話し合いは行ったのか」とエリクソンに尋ねると「いや、通常のミーティングしか行わなかった」との返事。しかも、この会見の際にもエリクソンとナッセは“ニアミス”を起こしていた。
ザウバーの会見は13時40分にナッセ、そのあと13時50分からエリクソンという予定になっていた。場所はザウバーのモーターホーム2階の長テーブルの一角。13時50分にエリクソンが2階に上がると、まだナッセが記者たちと話を続けていた。エリクソンは、しばらく様子を見ていたが、記者たちとの話をやめないナッセの態度に次第に苛立ちを見せ、その様子を悟った広報担当が強制的にナッセの会見を打ち切ったのだ。
スペインGP前には、こんなこともあった。新しいモノコックを手に入れたナッセに、ロシアGPの予選で敗れたエリクソンに「あなたも新しいモノコックが欲しいか」と尋ねたところ、「僕は、いまのままでいいよ」と言ったあと、頭の横で右手の人差し指をクルクル回したのだ──「新モノコックを要求するチームメイトはオカシイ」と言わんばかりだった。
エリクソンには、つもりつもった不満があり、モナコGPでもチームオーダーに応じようとしないナッセの態度に、ついに爆発したのである。
ザウバーはモナコGPのあと、ファクトリーにふたりを集めてミーティングを行ったという。しかし、すでに両者の仲は冷え切っており、モナコの一件で決定的なものになった。チームにとって同士討ちは受け入れがたい事態だが、今後も同じような事態が起きる可能性は十分ある。
ナッセはブラジルのメディアに対して、2017年はスポンサーのブラジル銀行とともに他チームへ移籍する可能性もあると発言しており、現在も資金難に苦しむチームにとっては頭の痛い問題が続きそうだ。