かつてはスーパーツーリング規定のもとで興盛を極め、BTCCイギリスツーリングカー選手権と並ぶ選手権として認知されていたスウェーデンの国内ツーリングカー選手権。そこに、日本のスーパーGTでも活躍しているビヨン・ビルドハイムが今季から母国凱旋の形で復帰することになった。
「長年このシリーズをウォッチしてきたし、レベルの高いドライバーが揃っているのも知っている。母国に戻って走ることができる機会に興奮しているよ」と語るビルドハイムだが、その初戦となった第2戦マントープパークではポールポジションを獲得。レースでは2位表彰台に乗るなど、早速の活躍を見せている。
同選手権は近年、シリーズ側とチーム側(ツーリングカー・チームズ・アソシエーション/TTA)との分裂抗争で選手権名を『TTA』と変えるなど紆余曲折があったものの、現在はSTCC(スカンジナビアン・ツーリングカー・チャンピオンシップ)の名称に回帰し、選手権独自の魅力を維持して今日に至っている。
マシン規定は、その選手権分裂騒動の渦中に制定されたもので、鋼管パイプフレームシャシーに、ニッサンVQ型由来の3.5リッターV6を搭載し、420PSを発生するワンメイクマシンとなっている。そこに各チームごとに独自のエクステリアを架装するのだが、最も有名なのがシリーズを代表するチームであり、昨年には正式にボルボ傘下となった『ポールスター・シアン・レーシング』のボルボS60。さらに、かつてBMW系だったPWRレーシングはサーブでの参戦を経て、今季セアト・レオンにマシンチェンジ。オリジナルのハッチバックスタイルとは一線を画すクーペライクなボディのマシンを走らせる。
そのほか、ルノーの東欧展開ブランドであるダチアやフォード・モンデオ、過去にはホンダ・シビック・クーペなど、オリジナリティ溢れるマシンが競うシリーズとなっている。
そんななか、ビルドハイムが所属するのが前身のシリーズに90年代から参戦する名門フラッシュ・エンジニアリング。長らくサーブ9-3を使用していたが、同チームは今季から新たにニッサンと協力関係を築き、リザーブドライバーのリナス・オーソンにニューマシンのステアリングを託している。
デビュー戦となったマントープパーク戦はレース1で6位、レース2で8位となったが、この欧州パルサー“フェイス”の新型マシンは、ゆくゆくはビルドハイムにも供給される見込みだ。
STCCの最高経営責任者であるヨナス・ランディンは「こうして海外の新たなマニュファクチャラーを歓迎できることを喜ばしく思う。こうした有力メーカーからのコミットメントを得られることは、我々のシリーズの未来に対して楽観的な観測を与えてくれるよ」とコメントした。
ただし将来的には……それが2017か18年かは不明ながら、STCCも現在ツーリングカーの世界で成功を収めつつあるTCR規定(TCN-1)へシフトするのではないか、とも噂されている。