WEC第3戦 ル・マン24時間 テストデー
TOYOTA GAZOO Racing
TS050 HYBRIDによる初のフルコーステストで手応え
FIA世界耐久選手権(WEC)第3戦ル・マン24時間レースのレースウィークを前に、通常は公道として利用されている特設コースを使用してのテストデーが6月5日(日)に行われた。TOYOTA GAZOO Racingは今季デビューとなったTS050 HYBRIDにとって初めて走るル・マンのフルコースで8時間にわたるテストをこなし、レースに向けて貴重なデータを収集した。
中嶋一貴、アンソニー・デビッドソン、セバスチャン・ブエミの駆るTS050 HYBRID #5号車はトップから1.822秒差の3分23秒197でテストデーでは総合5番手。小林可夢偉、ステファン・サラザン、マイク・コンウェイの3名がドライブする#6号車は6番手のタイムをマークした。
約1年にわたる、ドイツ・ケルンのTMGとトヨタ東富士研究所での努力の積み重ねにより生み出されたTS050 HYBRIDは、新たに2.4リッター直噴ツインターボエンジンと、8MJに対応したバッテリー方式のハイブリッドシステムを採用、無念の結果に終わった2015年のル・マン24時間レースの直後から改良を続け、この日のテストで手応えを得た。
2台のTS050 HYBRIDは規則により昨年に比べ燃料消費量を約10%低減されたにも関わらず、昨年のベストタイムを2.124秒も上回って見せた。
また、2台はトータルで179周、2440kmを走破し、耐久性の面でも高い能力を示した。#6号車はこの日LMP1カーの中で最も多い周回をこなした。
TS050 HYBRIDの開発においては、チームのアドバイザー兼アンバサダーのアレックス・ブルツが、2度のル・マン勝利の経験を活かし、既に今季も数回のテストに参加している。今回のテストでも#6号車で5周をこなした。
ル・マン24時間レースが行われるサルト・サーキットのほとんどは通常、公道として使用されており、この日行われた2度の4時間にわたるテストセッションは、レースウィークの6月15日(水)に練習走行が開始されるまで、唯一フルコースを走行出来るチャンスとなる。
この日のテストは、ル・マン24時間レースに向けて開発してきたローダウンフォース仕様での初走行であり、その競合力を見極める意味でもチームにとって非常に重要な機会となった。
この新しいパッケージは空気抵抗を低減して設計されており、ブレーキング時に充電された8MJのエネルギーによるハイブリッド・ブーストは最高速を更に向上させるものとなる。
TS050 HYBRID #5号車:
(中嶋一貴、アンソニー・デビッドソン、セバスチャン・ブエミ)
テストセッション第1回目:5番手(3分23秒197),40周
テストセッション第2回目:6番手(3分25秒324),42周
中嶋一貴:
再びここを走ることが出来て嬉しいですし、楽しめました。良い一日となり、天候もドライのまま推移してくれたことで、多くの周回を走ることが出来ました。午後にはロングランを担当し、タイヤ選択などで有用な多くのデータを得られました。セットアップも着々と進歩しており、今日望んでいた全ての作業はこなせました。パフォーマンス面でも、チーム全員の努力のおかげで昨年に比べ大きな向上が見られ、順調だと思います。
アンソニー・デビッドソン:
ル・マンに戻って来てTS050 HYBRIDをドライブ出来て喜んでいます。昨年の車両よりも大きな進化を遂げていることを感じられました。バランスも良く、ストレートスピードが重要なこのサーキットにおける8MJのハイブリッド・ブーストは素晴らしいものでした。しかし、車両安定性や高速コーナーの挙動など、更なるバランス向上のために作業を続けます。勿論まだやるべきことはありますが、今日一日のテストでこなせた内容については満足しています。
セバスチャン・ブエミ:
今日は多くの周回をこなして貴重なデータを得られましたが、忙しい一日でした。これから得られたデータを解析し、決勝レースへ向け、さらに改良を進めていきます。我々は常に速さを望んでおり、まだ満足してはいられません。しかし、手応えはあり、今日の結果には満足しています。TS050 HYBRIDはル・マンにおいての感触は良く、レースウィークに再び走るのが楽しみです。
TS050 HYBRID #6号車:
(小林可夢偉、ステファン・サラザン、マイク・コンウェイ)
テストセッション第1回目:6番手(3分23秒721),54周
テストセッション第2回目:5番手(3分24秒182),43周
小林可夢偉:
私にとってTS050 HYBRIDでの初めてのル・マンの経験となりましたが、順調でした。車両のセッティングを進め、多くの周回をこなすことが出来ました。今日の目的は多くのデータを収集すること、特にローダウンフォース空力パッケージでのデータ収集でした。良い一日でしたし、私にとっても良い感触でレースウィークに臨めそうです。トヨタドライバーとして初めてのル・マン24時間レース参戦を楽しんでおり、ここにいられて本当に嬉しいです。
ステファン・サラザン:
チームが今年のル・マンに向けて大変な努力を続けてきたお陰で、我々はTS050 HYBRIDで大きな進歩を遂げることが出来ました。このハイブリッド車両でこのコースを走る経験が出来るのは大変な喜びです。我々にとっては良い一日でした。セットアップ面で多くの作業をこなし、レースに強く、バランスの良い、狙った通りの車両に仕上げることが出来ました。レースへ向けてはセットアップの改善などまだやるべきことがありますが、今年は24時間を上位で争うことが出来ると確信しています。
マイク・コンウェイ:
皆がこの数週間、どれだけの努力をして来たかを知っているだけに、このテストのために車両を準備してくれたチームに感謝しています。いつもはテストが出来ないこのコースで、非常に多くの周回をこなせて良かったです。TS050 HYBRIDのバランスには満足しています。あまりクリアラップが取れなかったことと、更なるバランスの向上に集中していたので、ラップタイムはあまり気にしていません。我々は燃料の少ない状態や新しいタイヤでのアタックを試していませんし、タイムについてはまだ向上の余地があるでしょう。
アレックス・ブルツ(チームアドバイザー兼アンバサダー):
このル・マンのコースで再びコックピットに戻ることが出来て素晴らしい気分です。冬の間のテストでもたびたびテストを担当していたので車両には慣れています。引退したレーシングドライバーとして、この素晴らしいLMP1ハイブリッド・プロトタイプカーを再びル・マンでドライブ出来るチャンスを得られたということで、私にとっては最高の一日になり、楽しみました。しかし勿論、チームへのフィードバックを行いました。我々のテストは予定通り全てが順調に終わりました。