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GP topic:新ウエットタイヤはドライでもOK!? とくに市街地で強さを発揮か

2016年06月06日 16:21  AUTOSPORT web

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今年のF1モナコGPは雨に見舞われ、スタートはセーフティカー先導で全車ウエットタイヤ装着が義務づけられた。このウエットタイヤはピレリが冬の間に開発した新しいタイヤだったのだ。

 新ウエットタイヤは、どのようにして開発されたのか。ピレリのレーシングマネージャー、マリオ・イゾラに聞いた。

「我々は2016年に向けて、ウエットタイヤを改良すると決めていた。そこで1月にフェラーリ、レッドブル、マクラーレンの3チームによってポール・リカールでウエットテストを行った。いくつかの新しいウエットタイヤを試し、そのデータをもとに、さらなる改良が加えられて4月下旬に、ようやく実戦投入できる準備が整った」

 グランプリの週末に使用されたのは、モナコGPの決勝レースが初めて。印象的だったのは、3番グリッドからスタートしたルイス・ハミルトンが、ウエットタイヤを履いたまま、31周も走行したことだった。これについて、イゾラは次のように分析する。

「トレッド面のパターンを若干変更した。これにより、ウエットタイヤとインターミディエイト(ウエットとドライの間)タイヤのクロスオーバーが広がった」

 これまでのピレリの雨で完全に濡れたコンディション向けのタイヤであるウエットと、やや乾いてきたコンディションで履くインターミディエイトのクロスオーバーは狭かったため、ピンポイントで交換しなければならないという扱いづらさがあった。

 ところが今回ウエットが改良されたために、どんどん路面が乾いていくコンディションでも、より長く履き続けられるようになった。モナコGPでウエットを履いたドライバーとインターミディエイトを履いたドライバーが混在しても、しばらくの間はペースに大きな差が見られなかったのは、そのためだった。

 実際どのように改良したのかピレリは詳細を明らかにしていないが、写真の赤い矢印の部分に注目してほしい。従来のウエットと新しいウエットを見比べると、パターンのデザインそのものは同じだが、トレッド面がスクエアになったようだ。これにより接地面積が増え、乾いていく状況でも、しっかりと路面をとらえることができたのではないだろうか(注:下記リンクの訂正記事を参照ください)。

<訂正記事:ピレリの新ウエットタイヤが長持ちするようになった理由>

 

また、ハミルトンが31周も走行できた理由は、もうひとつある。モナコが低速の市街地コースだったことだ。あるエンジニアは「もしバルセロナだったら、ハミルトンはウエットタイヤで、あそこまで引っ張ることはできなかった」と言う。

新しいウエットタイヤがモナコで初投入されたことは、全員に平等に与えられた条件だ。それを、どのように使うのかはチームやドライバーによって異なり、その差も成績を左右する重要な要素になることを、あらためて認識させられた。