デトロイト・ベルアイルを舞台にダブルヘッダーで開催されたインディカー・シリーズ。5日に行われた第8戦の決勝レースは、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がチームメイトとのバトルを制し、昨年のインディGP以来となる勝利を挙げた。佐藤琢磨(AJフォイト)は、スタート直後の波乱に巻き込まれ、後方に下がるも徐々に順位を上げて10位フィニッシュを果たした。
1年以上のブランクを置いて、2014年チャンピオンのウィル・パワーが優勝を飾った。昨シーズンから幾度となく不運に見舞われてきたパワーだったが、今日の不運は彼のチームメイトのエリオ・カストロネベスに降り掛かった。
余裕を持ってトップをクルージングしていた彼は、燃費が良過ぎたために誰よりも多く周回し、そのタイミングでフルコースコーション発生。トップコンテンダーの多くがすでにゴールまで走り切れるだけの給油を終えていたため、ピットがオープンになって給油を行うと、リードラップの最後尾につくしかなく、勝利の権利を失った。
予選で驚異的ラップを完成させながら、他車をブロックしたペナルティでそのラップは無効に。パワーはポールポジションのはずが8番手スタートとなっていた。しかも、彼の代わりにポールを手にしたのは、ポイントリーダーのチームメイト、サイモン・ペジナウだった。今年のペジナウはとても良い流れに乗っているが、今朝の時点までパワーはまだ不運に取り憑かれたままだった。
しかし、予選で示した通りにマシンの仕上がりは最高で、チームメイトのペジナウを豪快にアウトからパスしてトップを奪った。残り20周でカストロネベスがトップ争いから脱落した後のことだ。
トップに立ったパワーは危なげなくゴールまでを走り切った。最終ラップには2位との差が一気に縮まったが、0.9203秒という十分な差を持ってゴールラインを横切った。昨年のグランプリ・オブ・インディアナポリス以来、1年1カ月弱で、通算26勝目をパワーは記録した。
「長かった……」とパワーは久しぶりの勝利を喜んだ。「これで僕のクルーたち全員にも自信が戻ってくると思う。体調不良で開幕戦を欠場し、その後にはアクシデントも幾つか起こした。厳しいシーズン序盤になっていたが、ようやくトップに上り詰めた」とパワー。ピッストップでライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)の前に出たのも大きなポイントだった。
ペジナウは2位でもハッピーだった。「誰も全レースで勝つことなんてできない。8戦で3勝、2位3回なら満足だ。しかも、ポイント2位との差は80点もある。これはデカイ。目標はチャンピオンシップだ!」と彼は語った。
予選2位だったハンター-レイがひとつ後ろの3位でゴール。「最後のピットストップを終えた時点でのポジションがあとひとつ上だったら、優勝のチャンスがあったかもしれない」と彼は悔しがっていた。
「ずっと不運が続いていたから、悪い事の一切起こらなかった今日のレースは良いものだった。3位で表彰台にも上れた。それは嬉しことだが、あとひとつかふたつ、上の順位だったらもっと嬉しかった」
「しかし、今日の1、2位になった彼らは本当に速かった。マシンが凄くグリップしており、アタックを仕掛けるところまで差を詰めることができなかった」とハンター-レイ。
ジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)が予選17位から4位フィニッシュ。ファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)による無理なアタックでダメージを被りながらも、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)が5位でゴールした。
佐藤琢磨は、スタート直後のアクシデントに巻き込まれ、最後尾近くまで順位を下げたが、ピット作戦も駆使して這い上がり、今年3回目となるトップ10入りを10位で達成した。
しかし、レース後の表情は険しかった。実績を残してきているデトロイトのストリートコースで、思うようにマシンを高いレベルまで仕上げ切ることができなかったからだ。
「昨日のレースまでに比べればマシンは速く、良くなっていました。しかし、レース終盤はマシンに安定感がなく、ラップタイムが遅かった。タイヤの内圧が間違っていたのかもしれない。セント・ピータースバーグとロング・ビーチでコンペティティブだったので、去年2位になっているデトロイトでは、今年も良いレースが戦えると思っていたんですが……」と琢磨は話していた。