2016年06月06日 11:02 弁護士ドットコム
17歳の娘がバイト先の男性上司(22歳既婚)と不倫し、妻にバレてしまった。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、娘の母親からの投稿があった。
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発覚の経緯は、男性上司の妻の母親、つまり不倫相手の義理の親から、娘宛にかかってきた電話だった。「ものすごい剣幕」でかかってきたため、いったんは母親が対応し、娘に話を聞いた上で折り返すと言って電話を切ったという。
母親が娘に話を聞くと、男性との関係は3か月ほど前から始まっていた。娘は、はじめは妻も子どももいるから、と拒否していたが、とうとう気を許してしまったそうだ。交際はしておらず、身体だけの関係だったという。母親は娘にバイトをやめさせ、上司の連絡先も削除させたうえで、「会うこともするな」「奥様と子供には土下座しても謝罪すること」としかったそうだ。
母親は、男性の妻や子どもには申し訳なく思う反面、男性に対しては、娘の体を弄んだ、と憤っている。母親は、「娘は訴えられ、慰謝料請求されるのでしょうか?」と心配するとともに、「親として、相手の男性に青少年条例として刑事告訴してしまっていいのか?」と質問しているが、そんなことはできるのか。澤藤亮介弁護士に聞いた。
「今回のケースで、上司の妻から、上司の交際相手である娘さんに対する不倫慰謝料を請求する場合、(1)請求根拠となる不法行為(民法709条)が成立するか否か、そして(2)成立するとして慰謝料額はいくらが妥当か、という2点が大きな論点になります」
澤藤弁護士はこのように述べる。
「まず、娘さんの責任について検討してみましょう。
(1)については、上司に無理やり肉体関係を持たされたといった事情がない限り、17歳の未成年とはいえ、自らの意思で既婚男性と肉体関係を持ったのであれば、不法行為自体は成立すると判断されるでしょう。
もっとも、(2)の慰謝料額については、娘さんが17歳の未成年であり、他方、相手が22歳の成人であって、かつバイト先の上司であったことなどの諸事情を踏まえると、上司の責任の方が重いと考えられ、通常の慰謝料より相当程度低い金額の慰謝料しか認められない可能性が高いです」
「次に、娘さんが負うべき責任について、ご両親も責任を負うかどうかを考えてみましょう。
娘さんの親権者であるご両親が、監督義務者などの責任(民法714条)を負うかによりますが、本件では、娘さんが17歳であり、アルバイトもしていた事情からすると、娘さんが責任無能力者とはいえないでしょう。したがって、ご両親が妻に対して法的な賠償義務を負う必要はないと判断されると考えられます。
もっとも、仮に裁判で17歳の娘さんが慰謝料を支払う内容の判決が出た場合などは、支払い能力がない娘さんの慰謝料を、ご両親が立て替えるなどして事実上支払うケースはあります」
母親は、男性を「刑事告訴したい」とも言っている。そんなことができるのか。
「今回、娘さんが『18歳未満』の17歳であり、相手が22歳の成人でかつ既婚者であることからすれば、青少年保護育成条例(淫行条例)違反が成立する可能性があり、刑事告訴すること自体は可能かと思われます。
もっとも、親告罪の強姦罪などと異なり、同条例違反は非親告罪ですので、厳密な意味での告訴ではなく、被害届や警察での相談レベルの申告でも、捜査や起訴に発展する可能性はあります。
なお、未成年との性行為が必ずしも『淫行』になるとは限りません。同罪で起訴されるか、さらに、有罪判決を受けるかについては、肉体関係を持つに至る経緯やその後の経緯といった諸事情から個別的に判断されるでしょう。
相手方のご夫婦がすぐに離婚しない場合などは、交渉によって、妻に、娘さんへの慰謝料請求権を放棄させつつ、こちら側も男性を刑事告訴しない旨の和解をすることも可能かと思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚・不倫問題を中心に取り扱う。事務所内の事件資料や書籍の全面データ化等、ITをフル活用して業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』、プレジデント社『不倫したい男、離婚したい女が読む本』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com