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AKB48『総選挙』は都市対抗の様相強まる? 香月孝史が速報結果を読む

2016年06月06日 07:31  リアルサウンド

リアルサウンド

「AKB48公式サイト | AKB48 45thシングル 選抜総選挙 :TOPPAGE」より

 AKB48グループが、6月18日にHARD OFF ECOスタジアム新潟で『AKB48 45thシングル 選抜総選挙~僕たちは誰について行けばいい?~』を開催する。それに先立って、6月1日には投票券の封入されているシングル『翼はいらない』がリリースされ、翌日の2日には1回目の中間速報が発表された。80位以内にランクインしたのはAKB48が30人、SKE48が19人、NMB48が8人、HKT48が22人、NGT48が1人(兼任メンバーは所属元で算出)で、渡辺麻友が42,034票を獲得し暫定1位となった。


 票数はこれからも大きく変動することが予想されるが、昨年よりも大幅に議席数を伸ばしたHKT48・NMB48の躍進や、若手メンバーが上位に多数ランクインしたAKB48など、現時点で各グループの状況もある程度見えてきた。『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者であり、AKB48グループに詳しいライターの香月孝史氏は、今回の速報順位や票の動きを「さらに都市対抗の様相が強まった」と分析する。


「AKB48グループの総選挙は、昨年の福岡・ヤフオク!ドームに続いて今回は新潟と、各姉妹グループが拠点とする場所で開票イベントが開催されます。昨年の『41stシングル選抜総選挙』は、HKT48の地元開催ということもあり、躍進した2014年よりも勢いを伸ばしたうえ、グループを牽引する指原莉乃が1位を獲得しました。地元で開催することで、そのグループの総選挙に対する意識が高まる契機にもなるはずです。以前に比べて、個VS個というよりも地域対抗の傾向が年々強まり、開票イベントは各グループの地元が持ち回りで開催する祭りのような形に変化している印象です。今年、地元開催のNGT48は新設グループのため、まだ大きなアドバンテージは見込みにくいですが、地元開催を経験することでグループ内に与える影響は大きいと思います。グループ対抗のムードは年々強くなっていくのではないでしょうか」


 また、同氏は「新たな投票権が結果に影響してくる」と、昨年からのシステム変更を指摘する。


「今年から、新たに各グループのモバイルメール会員であることも、1つの投票権となりました。これによるコアファンの投票行動も、若手メンバーが躍進するかどうかに影響してくるはずです。速報上位を見ると、このタイミングで浮上してきたメンバーに7位の岡田奈々がいます。グループ内でも期待の若手とされ、最近では4月の出演舞台『絢爛とか爛漫とか』でも、自身の立場と少し重なって見えるような役柄を堅実に演じ、強い存在感を見せていました。現在は休養中ですが、今回の総選挙を機に露出する機会が増えれば、コアファン以外にもその名を知らしめるかもしれません」


 昨年の小嶋陽菜・松井玲奈による出馬辞退の影響もあるのか、SKE48は大矢真那、矢方美紀、松村香織、柴田阿弥など、HKT48は穴井千尋と多田愛佳といったキャプテン2人のほか、中心メンバーの不出馬が相次いだ。このことについて香月氏は最後にこう解説した。


「昨年の小嶋陽菜、松井玲奈の不出馬は48グループ全体に向けて、『総選挙だけが全てではない』という価値観をはっきり示しました。次世代メンバーに託す、個人活動でさらにグループの認知を広げるなど、それぞれに思惑はあるでしょう。出馬辞退するという判断そのものが、メンバー自身のスタンスを能動的に表現する一つの手段になりますし、多様な価値観が示されたうえで、あえて総選挙に積極的に乗ることもまた、己の立場を強く表明するものでしょう。その一方で、峯岸みなみや横山由依といったキャリアのあるAKB48メンバーが、ごく自然に総選挙に出馬し続けたことも、一見当たり前のようでいて、意義が大きいと思います。知名度もあり活動の方向性もある程度定まっている彼女たちのようなメンバーにとっては、若手やセンターを競うメンバーたちとは総選挙の意義は違うはずです。ある意味では、もはや細かな順位に左右されないメンバーともいえます。けれども、総選挙の意義が相対化される一方では、イベントとしての価値は色あせかねない。彼女たちがことさらに気負うことなく、一大イベントとしての総選挙に変わらず参加することもまた、48グループ全体をあげての企画が継続していくうえでは、頼もしいあり方のように感じます」


 若手が躍進しやすい状況が生まれる一方、グループ対抗の要素が強まった『45thシングル選抜総選挙』。6月18日の最終結果はどのような結果になるのか、これらの変化を踏まえながら見守りたい。(中村拓海)