マクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は第6戦モナコGPを、ふたつの視点でジャッジ。
--------------------------
モナコGPで、またもマクラーレン・ホンダがポイントを獲得した。これでロシアGPから3戦連続での入賞である。これは、ホンダがマクラーレンと組んで復帰した2015年以来、初めてのことだ。しかも、今回はダブル入賞。12点を加算し、コンストラクターズポイントでもハースを抜いて7位に浮上した。ちなみに現時点でのコンストラクターズポイント24点は、昨年一年間で得た27点に迫る勢いである。
確かにグランプリ前に期待していたほどの速さを、予選で披露できなかったというもどかしかはあった。それでも、レースは結果がすべて。いかに速いマシンとパワーユニットを持っていても、フィニッシュラインを越えることができなければ、何も残らない。そういう意味で、マクラーレン・ホンダはドライバーも含めて、チームとしてしっかり機能していたと言っていい。
何事もなく週末を終えることが、いかに大切であり難しいかは優勝したメルセデスAMGですら、予選でパワーユニットに不具合が発生し、レースではロズベルグがレース序盤にブレーキに違和感を感じたためにポジションダウンするシーンが見られたことで如実に証明している。レッドブルはダニエル・リカルドがチームの戦略をミスで優勝を逃し、マックス・フェルスタッペンは若さが仇となってガードレールの餌食となった。フェラーリはキミ・ライコネンが土曜日の予選直前になってギヤボックスを交換して、5番手降格していた。
その点、マクラーレン・ホンダは期待していたほどの速さを示せなかったものの、致命的なトラブルやミスはなかった。2台でポイントを獲得したのは、メルセデスAMGとフォース・インディア、そしてマクラーレン・ホンダだけである。
このような結果にたどり着けた理由のひとつに、ホンダのパワーユニットの信頼性が向上していることが挙げられる。しっかりと走り込むことができているからこそ、チームはパワーユニット交換などの余計な作業をする必要がなく、無駄なトラブルも招くことがなく、リズム良く仕事していた。
モナコのピットは数年前の改修工事によって、ガレージそのものは広くなったが、ガレージの裏にあるはずのトランスポーターはなく、スペアパーツなどの置き場所は十分ではないため、グランプリ期間中にできるだけ余計な作業は増やしたくない。トラブルなく、走ることが大切だという理由もそこにある。
今回のモナコGPが4レース目のパワーユニットとなる2基目を積んでいたバトンは9位入賞しただけでなく、しっかりと完走を果たした。前戦スペインGPでは4レース目のパワーユニットを搭載していたアロンソが、レース終盤に制御系のシステムエラーによってリタイアしたが、ほぼ予定していた距離は走破することができた。
しかし、今回のバトンは完全なる4レース完走を達成した。アロンソは開幕戦に大クラッシュした際、パワーユニットを1基壊しており、バトンも2戦目のバーレーンGPで1基目をトラブルで失っているので、レース終盤は厳しい状況になるだろうが、昨年に比べれば雲泥の差だ。
昨年のホンダはモナコGPを終えた時点で2台とも3基をほぼ使い切ってしまっていた。それが今年のモナコGPはバトンが2基目を使い切るグランプリで、すでに3基目を投入しているアロンソも、それを使用したのはモナコGPが初めてだった。したがって、信頼面においては、ホンダはある程度の目処はついたと言っていいだろう。
そうなると、次はいかにパワーユニットの出力を高めるかだ。その点ついて長谷川祐介総責任者は次のようにコメントしている。
「いまのスペックでは、もうこれ以上の出力は出せないところまでやり尽くした。パワーアップに関しては、いろいろタマ(アイディア)をテストしているところなので、間に合えば、できるだけ早く入れたい」
信頼性に悩まされ続けた昨年には、聞くことができなかった言葉。ホンダの逆襲が、いよいよ始まる。
ホンダ辛口コラムはF1速報で掲載中!
ホンダ辛口コラム モナコGP編:モナコでなければ実現できなかったベストリザルト