トップへ

内田彩の勢いが止まらないーー武道館公演も発表したコンセプトライブをレポート

2016年06月03日 14:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『内田彩 CONCEPT LIVE 【Bitter Kiss】/【Sweet Tears】』の様子。

 内田彩が、5月28日にTOKYO DOME CITY HALLでコンセプトライブ『内田彩 CONCEPT LIVE 【Bitter Kiss】/【Sweet Tears】』を行なった。


 同ライブは内田が2月にリリースしたコンセプトアルバム『Bitter Kiss』『Sweet Tears』をもとにしたもの。昼公演では、ロック・ゴシックな楽曲を多く収録する『Bitter Kiss』をベースに、バックバンドを従えたハードなライブを展開。夜公演では、四つ打ちのキュートなエレクトロポップを多く収録した『Sweet Tears』をもとに、内田が一人で縦横無尽にステージを駆け巡った。本稿では夜公演『Sweet Tears』の模様をレポートする。


 前半4曲は、「Floating Heart」「color station」「リードを外して」「笑わないで」と、『Sweet Tears』の収録曲を披露。カラフルなエレクトロポップ「Floating Heart」や、サビ前のEDM風パートで初披露となる振り付けを見せた「color station」、トランス風の「リードを外して」、シンガーソングライター・金子麻友美が手掛け、内田によるエフェクトの掛かったボーカルとリードシンセが切なさを強調する「笑わないで」と、同じ作品でも幅広い楽曲たちが並んでいることを改めて実感した。


 曲間のMCで内田が「昼の部(『Bitter Kiss』)は汗だくになって終わったけど、夜は可愛い振り付けも入れつつ、みんなで音楽に乗るようなライブにできたら」とコメントしていたように、この日のライブは基本的にミドルテンポの楽曲で心地よい楽しさを与えながら、ときにじっくりとその歌声を聴かせるというもの。また、ライブの雰囲気も本人が「昼の部(『Bitter Kiss』)は頑張ってかっこいい自分を出すと宣言していたんですが、終わってからスタッフさんに『内田さん、2曲目からヘラヘラしてましたよ』と言われて(笑)。その反動でこっち(『Sweet Tears』)はヘラヘラしたいの」と語るように、良い意味で力の抜けた緩やかなものに仕上がっていた。


 続けて細やかなシーケンスから徐々に盛り上がる「ピンク・マゼンダ」を披露した内田は、「さっきまでは苦いのかな、甘いのかなって曲をお送りしましたが、そういう切なカワイイ曲は『Sweet Tears』以外にもたくさんあります」と述べ、「Sweet Rain」「オレンジ」「Merry Go」「Breezinʼ」と1stアルバム『アップルミント』からの楽曲を次々にパフォーマンス。その後のMCで新たに販売がスタートしたパンフレットが早々に完売したことを明かしたあと、同じく新商品のペンライトについて「もう1種類光り方があるんです。ジワっと光るんだけど、これどこで使おうか迷ってるので募集中でーす!」とファンへ呼びかけ。有明コロシアムワンマンの際にも触れた(http://realsound.jp/2015/12/post-5519.html)が、内田のライブはファンとの心の距離感が非常に近く、“共に作り上げる”という言葉を体現していた。


 MC後には「私からサプライズをお届けしたいと思います!」と『Sweet Tears』から「Party Hour Surprise!」を披露。思わぬサプライズ(アクシデント?)にも見舞われつつ、甘さたっぷりのトイ・ポップで再び会場を和やかな空気で包んだあとは「みんなと甘い夢をいつまでも見ていられますように……」と切ないエレクトロポップ「Sweet Dreamer」を歌い上げ、最後に「へらへらしてても、失敗しちゃっても、いつも優しく迎え入れてくれるこの場所が、私にとってはスウィートでスウィートでスウィートでスウィートで、本当に素敵な場所になっています。今日はスウィートなドリームをたくさん見せてくれてありがとうございました!」と、曲名になぞらえてファンへの感謝を口にし、本編が終了した。


 アンコールは、同公演唯一となる2ndアルバム『Blooming!』からの楽曲であり、四つ打ちのポップチューンに乗せた跳ねるような言葉の嵌め方が心地良い「with you」をパフォーマンス。直後に「ここですごい発表があります! 8月13日、日本武道館でライブをすることになりましたー!」と叫ぶと、客席からは大きな歓声が上がり、内田も「すごいよね! 意味わかんないでしょー(笑)!?」と目を潤ませながら笑顔をみせると、「私がソロデビューしてから今まで出してきた全曲歌います! 攻めるねー! もう誰か止めてよー(笑)!」と、2014年11月のソロデビューから約1年半で4枚のアルバムリリースをし、日本武道館公演にまで到達したスピードの速さについて驚きを隠せないようだった。アンコール2曲目では再び「Floating Heart」を歌ったのだが、ここではラストサビの<ふたりだけのステージ>を<みんなと一緒のー! ステージ!>といたずらに照れ笑いしながら言い換える一幕も。


 ライブはここで終了と思いきや、内田による最後のMCへ。彼女は「ソロデビュー時は『デビューしたくない』って思ってたんですよ(笑)。声優になりたくて、アイドル役で歌って踊ったりはしてましたけど、その延長線上でデビューはしたくなかった」と前置きし、デビュー後の活動について「私にしかできない何かを表現できたらと思って突っ走ってきたんですけど、こんなに一緒に喜んでくれるみんながいて『間違ってなかったんじゃないか』と思えて、月並みなんですけど幸せを感じます!」とコメント。続けて「私も悩んだり『ヤダー!』って言ったりすることはたくさんあるんですけど、今日みたいに笑いあえる夢のような時間を大切にしたい。これからもスウィートだけどビターさを忘れない内田彩でいたいと思います!」と笑顔でファンに語りかけ、ステージ袖へ捌ける直前に「ちょっと大好き。バイバーイ!」とささやいて公演は幕を閉じたが、最後の最後で内田が“デレ”な一面を見せたことにより、幸せな余韻を味わうファンの姿を多くみられた一日だった。


 本人が「もう誰か止めてよー(笑)!」と冗談交じりに語っていたが、内田の勢いはこの日発表となった武道館も越え、より先に向かって加速していくだろう。声優としての実力、キャラクターとしての魅力は言わずもがなではあるが、シンガーとしてのポテンシャルや彼女の活動を支えるクリエイター陣によるハイクオリティな楽曲とアートワークは、シーンを飛び越えて広がるのかどうか、この先の展開に期待したい。(中村拓海)