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「自治会」加入は義務なの? 月イチ掃除、罰金なんてムリです【小町の法律相談】

2016年06月03日 10:02  弁護士ドットコム

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引っ越し先の団地で、了承なく「当たり前のように」自治会に加入させられたという女性(トピ主)が、YomiuriOnline「発言小町」に、自治会を抜けたいと相談を寄せました。


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トピ主によると、団地には月1回掃除の日があり、仕事や子供の具合が悪くて参加できない時は、「罰金」を支払わなくてはならないそうです。しかし、集められたお金の使い道もわからず、自治会費の領収書ももらえず、トピ主は不信感を募らせています。


トピ主は「他で話を聞くと、自治会への加入に強制力はないと聞きました。それどころか、罰金等を微収するのは法律的には違反だとも聞きました」と話し、自治会から抜けたいと考えています。


レスには、「逆らうと面倒ですよ」「団地に住む利点だけを受けて、面倒な所だけは拒否するのはあまりに自分勝手」とトピ主をたしなめるコメントもあれば、「あくまでも、任意団体です」「抜けたいのなら、そうすればいい」という意見もありました。


トピ主の言うように、団地などの自治会への加入について、強制力はないのでしょうか?また、自治会の活動に参加できないことを理由に罰金を徴収することは法的に問題があるのでしょうか?五十部紀英弁護士に聞きました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「団地の自治会について」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0419/759236.htm?g=15)


 ●「自治会は強制加入団体ではありません」


日本では昔から「ご近所付合い」を大切にする文化があります。昭和の時代には、「ご近所付合い」が当たり前のように行われ、冠婚葬祭は近所が助け合って行っていたように思います。自治会への加入についても、「ご近所付合い」の考え方を少なからず踏襲しているのではないでしょうか。


しかし、ご近所の人間関係が希薄になりつつある今日において、自治会への加入について「なぜ入らなければいけないの?」と疑問を持つ方もいるでしょう。


では、自治会への加入に強制力はあるのでしょうか。この問題は、最高裁判所の判例において解決されています。


最高裁は、「被上告人(自治会)は、会員相互の親ぼくを図ること、快適な環境の維持管理及び共同の利害に対処すること、会員相互の福祉・助け合いを行うことを目的として設立された権利能力のない社団であり、いわゆる強制加入団体でもなく、その規約において会員の退会を制限する規定を設けていないのであるから、被上告人(自治会)の会員は、いつでも被上告人に対する一方的意思表示により被上告人(自治会)を退会することができると解するのが相当であり、本件退会の申入れは有効であるというべきである」(最高裁平成17年4月26日判決)と、自治会を強制加入団体ではないと明確に判断しています。


最高裁にかぎらず、下級審でも、自治会への参加及び会費の支払いを強制したことが「不法行為にあたる」とした裁判例もあります(福岡高裁平成26年2月18日判決)。


もっとも、入居の際に自治会に加入して規約に同意した場合、退会するまでの間は、その規約に書かれている内容に従う必要があります。したがって、自治会の活動に参加できないときの罰金なども、それが規約に書かれている場合は、公序良俗に反するようなあまりにも不当な内容でない限り、支払わなければならない可能性が高いでしょう。


また、自治会への不参加を理由に、ゴミ庫などを使うな、と言われることもあるかもしれません。しかし、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により、ごみの収集、運搬、処分については市町村の義務とされておりますので、市区町村に相談をすれば問題なく使用できるでしょう。


「ご近所付合い」も時代とともに変化し、なかなか強制することは難しくなっているようです。それぞれのコミュニティや時代にあった、新たな「ご近所付合い」の形を探していく必要がありそうですね。




【取材協力弁護士】
五十部 紀英(いそべ・としひで)弁護士
弁護士法人アドバンス代表弁護士。第一東京弁護士会、日本マンション学会、スポーツ法政策研究会などに所属。日本プロ野球選手会公認代理人。法人・個人を問わず、あらゆる方が抱えるリスク・トラブルに対し、常にクライアントの側に立って向き合うことをモットーにしている。

事務所名:弁護士法人アドバンス
事務所URL:http://advance-lpc.jp/