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興行成績から読み解く、二階堂ふみ×山崎賢人W主演作『オオカミ少女と黒王子』の実力

2016年06月02日 20:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『オオカミ少女と黒王子』(c)八田鮎子/集英社 (c)2016 映画「オオカミ少女と黒王子」製作委員会

 先週末の土日2日間は『ズートピア』が動員32万4549人、興収4億3867万1300円を記録し、4週連続1位と相変わらず絶好調。累計動員は412万人、累計興収は53億円を突破。来月初頭には、同じディズニー作品であり、118億円という驚異的な興収を上げた『アリス・イン・ワンダーランド』の続編『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の公開が控えているわけだが、2016年公開作品ナンバーワンの可能性も見えてきた『ズートピア』の勢いを止めるのは、もしかしたら同作となるかもしれない。ディズニーとしては“嬉しい悲鳴”といったところだろうか。


参考:菜々緒が明かす、ドSや悪女役がハマる理由「ハードルが高ければ高いほどやりがいがある」


 初登場2位となったのは『オオカミ少女と黒王子』。285スクリーンで公開されて、土日2日間で動員19万2506人、興収2億3362万6300円という記録。相変わらず堅調にヒットを重ねている少女マンガ原作実写化作品だが、今回はこの数字をどのように位置付けるべきか、近年の少女マンガ原作実写化作品の数々との比較によって明らかにしていきたい。


 まず、配給会社の観点から。同じワーナー・ブラザース映画製作・配給作品としては、最終興収24.3億円を叩き出した2015年9月公開の『ヒロイン失格』との比較は避けられないだろう。268スクリーンで公開された『ヒロイン失格』の初週土日2日間の動員は22万4083人、興収2億6252万230円。『オオカミ少女と黒王子』は動員比でその約86%、興収比で約88%という結果。なにしろ『ヒロイン失格』は昨年の公開作の中でも際立ったサプライズヒット作と呼べる作品だったので、『オオカミ少女と黒王子』は十分に健闘していると言っていいだろう。


 次に、出演者の観点から。といっても、これまでインディペンデント系作品やアート系作品の出演が多かったヒロイン役の二階堂ふみではなく、ここで比べるべきはW主演のもう一人、山崎賢人である。前述の『ヒロイン失格』が大ヒットとなった原動力の一因でもあった山崎賢人だが、『ヒロイン失格』と『オオカミ少女と黒王子』に挟まれた2015年12月に公開された出演作『orange -オレンジ-』も、最終興収32億以上となる大ヒット。303スクリーンで公開されて、初週土日2日間の動員は26万1779人、興収3億1177万8900円を記録。『オオカミ少女と黒王子』は動員、興収ともにその約75%。この結果は「山崎賢人主演作品が3作連続でヒットを記録」と言えるのと同時に、「今回は山崎賢人主演作品としては少々物足りない結果」という側面もある。


 最後に、作品テーマの観点から見てみよう。というのも、十把一絡げに少女マンガ原作実写化作品と言っても、そこには明確にテーマのトレンドが存在していることを見過ごしてはいけない。現在の流行はズバリ、“ドS系イケメン男子”モノ。そのトレンドを強く印象づけたのは、160スクリーンという中規模の公開ながら、2016年2月の公開週の土日2日間で動員15万7680人、興収1億9070万5900円をあげてその週の1位となった『黒崎くんの言いなりになんてならない』のスマッシュヒットだ。公開規模がかなり違うので単純な比較はあまり意味がないが、動員でその140%以上を記録した今回の『オオカミ少女と黒王子』のヒットによって、日本の各映画会社は「“ドS系イケメン男子”モノはまだまだいける!」と判断したに違いない。きっと水面下では、“ドS系イケメン男子”が登場する少女マンガの原作権争奪戦が繰り広げられていることだろう。ドSでもイケメンでもない自分にとっては、肩身の狭い日々がまだ当分続きそうだ。(宇野維正)