「君はこの店には合わない。合わない人間とはやっていけない」。アルバイトとして勤務してから4日目、マネージャーからこう言われて解雇されたという男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談を寄せました。男性は、今年4月から、専門学校進学のためコンビニでアルバイトを始めたそうです。ところが、4日目にして解雇を言い渡されてしまいます。マネージャーによると、解雇の理由は「レジのミス」「割りばしなどの備品の過剰な持ち帰り」「商品の補充がマニュアル通りではなかった」ということでした。男性は、突然の解雇に納得できません。備品については、「出勤4日という時点で過剰に持ち帰るほども日数もありません」として、最低限の持ち帰りであることを主張。商品の補充の仕方についても、「マニュアル通りのやり方を誰からも教えて貰っていません」。また、「一度ミスがあったことや新しく知ったことは全てメモを取り、次の出勤ではしっかりできるように努めていた」と話しています。このような理由での解雇は、不当な解雇と言えるのでしょうか。大山弘通弁護士に聞きました。
●「この程度の理由で解雇することは違法」
上記程度の理由で解雇することは違法となるでしょう。もちろん、レジのミスが数万円にのぼるとか、備品の持ち帰りが莫大で、もはや横領といえるレベルではないことが前提です。法律上、客観的に合理的な理由のない解雇や社会通念上相当といえない解雇は無効とされています(労働契約法16条)。上記程度の理由では、客観的に合理的な理由があるとも、社会通念上相当ともいえません。さらに、アルバイトであれば、契約期間が1年間などに限定されていることが多く、その限定された期間内の解雇はやむを得ない事由が必要とされ(労働契約法17条)、解雇がさらに厳しく制限されています。店がアルバイトを解雇できるのは、「誰が見ても解雇されて仕方がないといえる理由がある」、「使用者が何度注意しても就業態度が改まらない」などの場合です。例えば、アルバイトが失敗しても見守ってきたが、どうにもならないほど仕事ができず、むしろ店に損害が発生するとか、もはや犯罪ではないかといえるような行いの悪さがあれば、解雇もやむを得ないと言えるでしょう。ただし、使用者としては、解雇がやむを得ない事情があるということを検証できるように、記録に残しておく必要があります。
● 「辞めたくないとはっきり意思表示することが大事」
もしも不当な解雇を言い渡された場合、対抗手段としては、解雇に唯々諾々と従うのではなく、そんな不当な解雇は無効だと言って解雇を拒否することです。しかし、一人で会社を相手にするのは難しいでしょうから、アルバイトでも入れるユニオン(労働組合)などに相談してみるのはどうでしょうか。個人の力は弱くとも力を合わせれば、会社に対抗できます。その他の手段としては、労働局にあっせんを申し出たり、裁判に訴えるという方法がありますが、個人では難しいので弁護士に相談するのがいいでしょう。なお、簡単には解雇できないと分かっている使用者は、労働者へ「辞めてくれないか」と退職を勧奨し、本人が応じたら自主退職の手続きをとることが多いです。このような退職は解雇ではなく、自主退職ということになります。したがって、後から「本当は辞めたくなかった」「解雇は無効だ」といって争うこと困難です。労働者としては、たとえ退職を勧奨されても、辞めたくないなら辞めたくないとはっきり述べて意思表示することが大事です。
【取材協力弁護士】
大山 弘通(おおやま・ひろみつ)弁護士
労働者側の労働事件を特に重点的に取り扱っている。労働組合を通じての依頼も数多く、もちろん個人からの相談も多い。労働事件は、早期の処理が大事であり、早い段階からの相談が特に望まれる。大阪労働者弁護団に所属。
事務所名:大山・中島法律事務所
事務所URL:http://on-law.jp/