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飲食店の学生バイトが部活仲間に「8割引」で提供して処分…大盛り程度なら問題ない?

2016年06月01日 11:02  弁護士ドットコム

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東北学院大(宮城県)のサッカー部員3人が、アルバイト先の飲食店でレジや券売機を不正に操作し、友人たちに通常より安い価格で食事を提供していたことが分かった。地元の河北新報が5月25日に報じた。


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期間は昨年10月から約2カ月間。学生たちは、仲間のサッカー部員や硬式野球部員ら約30人に対して、通常の2割ほどの価格で食事を提供していた。大学によると、すでに金額は弁済ずみ。サッカー部には、2月から半年間の活動停止などの処分がくだっており、野球部も活動を自粛しているという。



このニュースはネットでも話題になり、「やり過ぎたな…せめて大盛りサービス程度にしておけばw」などの意見が出ている。確かに、飲食店が常連や知り合いに盛り付けのサービスをすることは珍しくない。とはいえ、アルバイト店員が独断で大盛りや品数を追加しても良いのだろうか。齋藤裕弁護士に聞いた。



●ポイントは「盛り付けの基準」の有無


「今回の件は、背任罪に該当する可能性があります。法定刑は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。背任罪を規定した刑法第247条では、『他人のためにその事務を処理する者』が、第三者の利益を図るなどの目的で任務に背く行為を禁止しています。



民事上も、学生らは『債務不履行』あるいは『不法行為』として差額分の賠償責任を負う可能性があります」



料金ではなく、盛り付けを増やすなどのサービスだったらどうか?



「まず、品数を増やすことについて検討してみましょう。



この場合も、飲食店側は増やされた品の費用分の損害を被ります。なので、基本的には背任罪が成立し、民事上の賠償責任を負う可能性があります。ただし、実際に警察が動き、刑事責任が問われる事態は想定しにくいです。



大盛りについては、飲食店が盛り付けの基準を明確に設けていたか、どの程度大盛りにしたか次第かと思います。



盛り付けの基準が明確に決まっており(例えば、1杯200グラムで、計測することと定められているようなとき)、大幅にそれを上回る大盛りにすれば、やはり背任罪が成立し、民事上の賠償責任を負う可能性はあるでしょう。ただし、実際は立証が困難なので、責任追及をされる現実的危険性は小さいと思われます。



一方、盛り付けの基準がはっきりしていない場合には、刑事上・民事上の責任は発生しにくいでしょう。



いずれにしても、店側が『損害』と感じるような、過度のサービスは控えるべきでしょうね」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:新潟合同法律事務所
事務所URL:http://www.niigatagoudou-lo.jp/