今季マノーからF1デビューを果たしたインドネシア人ドライバー、リオ・ハリアントに関して「シーズン途中にシート喪失の可能性がある」という報道が、ここ数週間続いている。きっかけは4月から同国で始まった小口募金を募るキャンペーンである。これはハリアントを資金的にバックアップしてきたインドネシア政府が、マノーに約束したスポンサー料を払いきれず、代わりに一般の募金で足りないぶんを賄おうというもの。必要額は420万ユーロ(約5億2500万円)で、7月中旬が期限だという。
ハリアントのメインスポンサーは国営石油企業プルタミナであり、石油価格の下落が世界各国の関連企業の業績を直撃していることは事実。パストール・マルドナドがルノーのシートを失ったのも、故国ベネズエラの国営石油企業からの資金供給の目処が立たなくなったためで、ハリアントが同じ苦境に立たされているとしても、不思議ではない。
しかし実態は、少し違うようである。ハリアントに近い関係者が語ってくれたところでは、今回の件は、むしろ政治的な文脈で捉えるべきと言うのだ。政府が前面に出てサポートすることにインドネシア政界内で批判があり、それを、ある程度ぼかす意味合いから小口募金の話が出てきたという。「他に、よほど莫大な持参金を持ってくるドライバーが出現しない限り、少なくとも今季いっぱいハリアントのシートは安泰だ」と、この人物は明言していた。
一方でアジア人唯一のF1ドライバー、そして経済発展著しい同国のスターであるハリアントに、日本企業も多大な興味を抱いているという。インドネシア進出を目論む日本の飲料メーカーやIT企業などが、ハリアントをメインキャラクターに起用することを考えているらしい。これまた実現すれば、ハリアントの商品価値がさらに上がることになり、シート喪失の恐れはいっそう遠のくことになりそうである。